ニュージーランド国会教育科学委員長と懇談 オーストラリアへ
2009年12月16日
ニュージーランド「教育改革」調査3日目。まず教育評価庁(Education Review Office, ERO)を視察。グラハム・ストープ長官とジェニー・クラーク女史が応対してくれました。
EROは、教育省から独立した行政機関で、ニュージーランドの各学校の評価を行い、結果を公表しています。
評価の基準は6つあります。@学校の運営――学校運営理事会(BOT)がうまく機能しているか、A学校のマネジメント――校長や教頭がリーダーシップをとれているか、Bカリキュラム――どのように実施されているか、学ぶ・教えるがうまくいっているか、C自己評価――まずこれが大事、EROはその欠点を補う、Dコミュニティー――保護者と協力できているか、E生徒がどれだけ成果を上げているか――これがもっとも重要、とのことでした。
6つの基準ごとに「質問項目」があり、それを使って評価を行います。すべての学校は3年に1度評価を受けます。EROには250人のスタッフがおり、各学校について評価レポートが書かれ、ウェブサイトで公表されます。人口400万人のニュージーランドで、100万回のアクセスがあり、人々の関心は非常に高い。学校の評価について問い合わせの電話も多いといいます。
私は、「ひとつ心配な点がある。結果が公表されたら、保護者は問題のある学校を避けるようにならないか?成績のよい学校に子どもを入れるために、引越しする保護者が出るのではないか?」と質問。
ストープ長官は、「そういうこともある」と認めたうえで、「なぜ学校を評価するか、それは子どもたちに最善の教育を提供するためだ」と回答。クラーク女史も、「評価基準を示したパンフレットの1ページ目に“子どもが中心”と書いてある」と説明。
「成績を数値で公表したら、学校の序列化にならないか?」との再度の問いに対しては、「学力だけの序列化はしない」「BOTは校長から生徒に関して、とくに成績に関して詳しい情報をもらう。そして、どう財源を分配するか考える。これがBOTの一番の仕事」「住民が地元の学校に興味があることが一番大事」などの答えが返ってきました。
今朝のニュージーランドの新聞に、ある校長が生徒の試験結果を改ざんして報告していたことが発覚した、と報じられていましたが、学校ごとに成績を数値で公表するやり方は、まったく問題なしではなさそうです。
★続いて、ニュージーランド最後の日程、アラン・ピーチー・ニュージーランド国会教育科学委員会委員長(国民党・当選2回)との懇談です。
ピーチー委員長も元教師で、ニュージーランド最大の高校の校長も務めました。ピーチー委員長は、「学校に自決権と責任をもたせた『教育改革』は大変よかった。教育に競争があることはいいことだ。私の学校がよくなったらまわりの学校もよくなった」といいます。ニュージーランドの「教育改革」は様々な立場から様々な評価がされているようです。
ピーチー委員長には学費のことを聞いてみました。ニュージーランドの公立高校の授業料は無料。私学もありますが9割の生徒は公立高校に通っているとのことでした。
大学はすべて公立。学部によって授業料は違いますが、一番高い医学部でも年間50万円ほどで、他の学部は日本の国立大学よりかなり安い。ほぼ100%の学生が国の教育ローン(無利子)を利用しており、卒業後一定の収入(年100万円ほど)に達すると収入に応じた返済をはじめます。それとは別に、生活手当(給付制)が支給されるので、親の負担は日本よりうんと少なく、多くの学生は親の経済的支援なしに大学に進学するようです。教育費の負担が平均年収の3割にもなる日本とはえらい違いです。
【きょうのおまけ NZ国会本会議場で発言!?】
ピーチー委員長との懇談後、ニュージーランド国会のなかを案内してもらいました。本会議場は日本のそれよりかなり狭く、野党と与党が対面で座る英国式。
議長が着席している間、中央のテーブルの上には装飾の施された棍棒のような武器が置かれます。議場を平定するための象徴だそうでこれも英国議会と同じだそうです。
ついに、ニュージーランド国会本会議でも発言…のマネをさせていただきました。
ということで、ニュージーランドの「教育改革」の調査は終了。次の調査地、オーストラリアに空路向かいました。ニュージーランド空港で食べたキウイ・フルーツは、完熟でやわらかくとても甘かった。硬くてすっぱいイメージの日本で食べるキウイとは別物のようでした。
★オーストラリア最大の都市シドニーは高層ビルが立ち並ぶ大都会。総領事公邸で、現地の日本人学校、日本語補修学校の関係者のみなさんと懇談。日本への帰国を前提とする長期滞在者の子どもには日本政府から補助が出るのに、日本国籍を持つ永住者にはまったく支援がないことなど、具体的な要望も聞かせていただきました。各国の取り組みも研究してみたいと思います。