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中小企業をつぶしながら
銀行の健全性を確保するのは本末転倒

参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会 1998年6月8日

○山下よしき 私は、行政改革と言うのなら、省庁再編という形よりも、これからの行政はどうあるべきかという内容がより重要だというふうに思います。そこで、金融行政について貸し渋りの問題でお伺いをしたいと思うんです。

 政府は、銀行の貸し渋り対策にも資するとして自己資本比率改善のために十二兆円の公的資金を投入することを決め、既に三月、二十一の銀行に合計一兆八千億円の資金を投入いたしました。また、総理も大蔵大臣も、銀行業界に対して貸し渋りの解消という要請を繰り返しされてきたところであります。しかし、依然として貸し渋りは解消しておりません。一日銀が先月の二十日に発表した国内銀行預貸金調査結果によりますと、今年の一−三月の中小企業向け貸出残高は前年比マイナス三・三%、中堅企業はプラス〇・六%、大企業マイナス一・六%となっておりまして、中小企業にとって特に厳しいものとなっております。

 それからまた、通産省が先月二十二日に発表した貸し渋りの調査結果でも、民間金融機関の融資態度が厳しくなったとする回答は、中堅、大企業が収束の方向に向かっている一方で、中小企業は三月三二・五%、四月三二・二%、五月三〇・八%と依然として三〇%以上という高い水準が続いております。

 私は、金融機関がその地域の金融ニーズにこたえて地域経済の発展に貢献することは金融機関の公共性に照らして当然の責任だと考えております。

 そこで、大蔵大臣にまずこの貸し渋りの現状と金融機関の社会的責任について認識を伺いたいと思います。

○松永光大蔵大臣 民間金融機関、これは健全な中小企業などの企業に円滑に資金を供給することが本源的な役割だと、こう認識しております。そして、この機能が十分に果たされることが望ましいわけでありまして、これが果たされることによって我が国経済は順調に発展する、こう思っております。果たされないという事態があれば、それは国民経済上極めて問題があるというふうに認識しております。

 先ほど委員は全国の金融の数字をおっしゃいました。これはいろいろなとり方があるわけでありますが、実は全国銀行協会連合会が発表した四月末の主要行の貸出残高、これは前年同月比では〇・三%の減少だが、三月末に比べれば一・一%の増加、こうなっておるわけであります。

 ただ、この統計についてはよく見なきゃならぬ点があるわけでして、それは不良債権等を流動化すれば、すなわち売却すれば、貸出金額の減少になるわけです。そういった点を差し引けば、実は三月に比べて四月の方は約二・八%の増加という数字が見られるわけであります。

 したがいまして、三月末の時点で行った申請銀行に対する資本の注入の措置というものは、それなりに効果があったというふうに見ておるわけであります。

○山下よしき それなりに効果があったということですが、日本経済新聞が五月二十七日の夕刊で発表しております。「都市銀行各行が企業向け貸出金利の引き上げ要請に動き出した。」、「貸出先企業を格付けし企業の信用リスクに応じて貸出金利を提示している。引き上げ幅は中堅・中小企業向けで〇・二五−〇・五%程度の例が多い。金利引き上げに応じない企業には返済を求めるケースもあり、産業界はこうした動きに反発している。」。

 私も大阪の地元の中小企業の皆さんの状況を聞きましたけれども、例えばずっと黒字を計上して業績も上向きであった企業が、銀行に預金をしこれを担保に借り入れをしておるわけですが、四月以降、銀行から、本来なら金利は二・八%、二・八五%だ、おたくはこの金利の基準より低いので預金を積み増すかあるいは金利を上げたいというふうに突然言われた。これは、新たな融資を申し込んだわけでもないのに、銀行側からの一方的な金利引き上げ要求であります。

 そのほかにも、担保価値が下がっているので担保を追加するか金利引き上げをしたいと言われた企業がもう四月以降続々と出ているわけであります。たまたまほかの地方銀行や信金、信組から借り入れて急場をしのいだ方はいいんですが、それができない、当てのない企業は、残念ながらサラ金に手を出したり、あるいはもう会社を続けていくことができなくなったりしている状況が生まれているわけですから、公的資金の投入で貸し渋りが解消されたという認識には私は到底立ち得ないというふうに思うわけです。

 それで、私、こういう貸し渋りの実態がずっと続いている背景に、昨年三月五日付の「早期是正措置制度導入後の金融検査における資産査定について」という金融検査部長から各財務局長、金融証券検査官などに出された通達があると思うんです。きょう私持ってまいっていますが、勉強させてもらいましたけれども、まずこの通達の性格について説明いただけますでしょうか。

○山口公生銀行局長 官房の金融検査部長名で通達を出しておりますが、これまでの金融検査のあり方を見直すという趣旨でございます。より効率的、また各金融機関の自主的な、例えば自己査定等をよくチェックするというところに重点を置くというような内容でございます。

○山下よしき これが金融機関の自己査定の一つの基準になるわけですね。それをチェックするものであります。

 この通達を見ますと、貸出金の分類基準というものが書かれてあります。債務者の状況などによって正常先、それから要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、そして破綻先の五つに貸出金を分類することにしております。

 この正常先とは一体何かということで、これも中身が書かれてあるんですが、「正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者」というふうになっております。

 そこでお伺いしたいんですが、この「業況が良好」、「財務内容にも特段の問題がない」というのはどういうことなんでしょうか。

○山口銀行局長 ケース・バイ・ケースで判断をするということだろうと思いますが、一般的に言って、銀行が貸し出しをやっておりますので、金利あるいは元本の返済が確実だというような観点から見たわけでございます。そうしたことで、その会社が業況、例えば売り上げあるいは利益等から見て返済に問題がないというような場合を指しているものと考えられます。

○山下よしき ケース・バイ・ケースという非常にあいまいなお答えなんですが、私は大蔵省の金融検査部に問い合わせをしまして、大蔵省としては確かにケース・バイ・ケース、しかし参考にしてくださいということで送っていただいたのが金融財政事情研究会の自己査定の実務というマニュアルであります。

 これによりますと、「業況が良好」というのは、売り上げが業界の平均以上に伸び、安定的に黒字決算をしている状態を指す、これが大体金融機関の常識というふうになっております。それから、「財務内容に特段の問題がない」というのは、バブル時代の被害の痕跡をとどめていない、含み損や不良債権がないということだというふうに、ここにもそういう趣旨のことが書かれてあります。

 そうしますと、こういう条件をつけられますと、この不況の中で大部分の中小企業というのはもう最初から貸し付けの対象から外されてしまうことにならざるを得ない。

 国税庁の資料、平成八年分の「税務統計から見た法人企業の実態」によりますと、赤字法人、欠損法人の割合は六四・七%。もう少し小さい中小零細企業になりますともう七割以上が赤字ですから、黒字じゃなかったらもう最初から貸してもらえない。法人ですらこれですから、個人事業者にとってはもっとこれは厳しいハードルになるわけであります。

 これまで銀行は確かにこういう定量分析も一つの基準にしてきました。しかし、これまでは支店長の権限などもあって、経営者の資質などを評価する定性的な分析も重視していたわけであります。継続的に融資をそういう経営者の資質を評価して続けてきた。中小企業のほとんどはこれまでも、財務上は赤字ということが多かったんですけれども、商売の実態を見て判断していたわけであります。しかし、こういう通達が出され、これに沿って自己査定をやれということになりますと、これはもう定量分析による査定が優先される、多くの取引先がこれによって融資不可能になる、融資対象から外れる、格下げされる結果になって、これがクレジットクランチの一つの大きな要因ではないかと思うわけであります。

 大臣は先ほども健全な企業というふうにおっしゃいました。普通、世間一般で健全な企業といったら、やはりきっちり元金を払う、利息を払う、最初の約定どおり返済をしている企業、これはもう普通一般では健全な企業の範疇に入るんじゃないかと思う。しかし、幾ら一生懸命やりくりして返済をしていても、この大蔵省の通達の基準に従ってやれば正常先に入れてもらうことができないということになるわけです。私は、こういうことがまかり通ったら、これは行政指導による貸し渋りの勧め、貸し渋りマニュアルになっていくんではないかという大変な懸念、現状はそうなっているということを指摘せざるを得ないわけです。

 大蔵大臣、正常な健全な企業というのをここに言うこんな狭い企業だというふうに限定してしまったら、私は銀行が中小企業に対する責任を果たし得なくなるんじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。

○山口銀行局長 今御指摘いただきました貸付債権の分類は、銀行の自己査定、つまり自分のところの貸し出し状況をきちんと把握するというためにやるものでございます。

 今、先生の御指摘で、正常なもの以外は貸し出さないというふうな前提でお話しのように承りますけれども、例えば第U分類、要注意先債権でも現実に貸し出しを続けております。言ってみれば、第U分類といいますのは、不良債権と決めつけるものではございませんで、結局はよくリスクを管理する、逆の言葉で言いますと、ハイリスク・ハイリターンとも言える部分があるという部分でございます。

 中小企業の金融等につきましては、金融機関は、その企業の将来性、今は赤字であるけれども将来は伸びていくというような場合には、それを金融機関の収益源として見るということもしばしばあるわけでございます。したがって、自己査定で正常先でないからすべて融資がとめられるということはないというふうに思います。

 そうしたことを金融機関はよく管理をしながら自分の銀行の健全性を保ち、健全性を保つことによってまた新たな中小企業への貸し出し余力というものを生み出す、こういうことではないかというふうに考えております。

○山下よしき それは非常に理想的な期待なんですね。

 しかし実際は、これは要注意先あるいは第U分類にされますと、金融機関としてはそれなりの引き当てや償却をしなければならない。それがちゃんとやられているかどうかを今後自己査定に基づいて金融検査が入ったときにチェックするというふうになるわけですから、これは幾ら貸したくてもそういう分類を定量的にしたところについては引き当てや償却をしなければだめだというチェックなんですね。

 ですから、金融機関としては、ただでさえROA、総資産利益率を高めなければならない、そういうときにこういう貸出先を抱えておったら、やはり利益が下がっていくからどうしようもない、貸し出しを圧縮しなければならない、金利を上げなければならないというふうになるわけです。やはりこれが背景にある。

 大蔵大臣、大臣の言う健全な企業、正常な企業というのは一体どういう企業なのか、もう一度御答弁願いたいと思います。

○松永大蔵大臣 いましばらくの間は民間金融機関に対する銀行法に基づく監督、そういったものの権限は大蔵省にあるわけですが、あとしばらくすると金融監督庁に移るわけであります。その間のことではありますけれども、先ほども申したとおり、銀行というものは健全な企業に対しては必要な資金を融資するというのが本来的な任務ですね。

 ただ、大蔵省としては、日本の銀行が多額の不良債権を抱えておるなどということをそのまま存置することは、日本の金融機関そのものに対する信頼が低下していきます。そういったことは避けていかなきゃなりませんので、銀行の健全性を確保するためのことはきちっとやっていかなきゃならぬ、こういうことであります。一方、個々の貸し出しをどうするかという問題は個々の金融機関の判断によってなされることでありますが、余り厳しくやるとお客さんがなくなっていきます。

 一方、政府の方では、政府系金融機関に対する貸出枠の拡大あるいは信用保証制度の拡充等々やっておりますので、そちらの方で救済するというか対応する、こういったことをやっておるわけでありまして、いずれにせよ、貸せ貸せとやりますというと銀行の体質は悪化します。それは全体として日本経済のマイナスになります。したがって、その点の健全性確保だけはきちっとやれということを行政としてはやらざるを得ないという面があるわけです。

 両方あるわけですから、その両方を適切にやっていくのが大蔵省の務めであろう、こう思っております。

○山下よしき 中小企業をつぶしながら銀行の健全性を確保しても私は本末転倒だということを指摘して、終わります。(拍手)

日本共産党 市田忠義 宮本岳志 しんぶん赤旗
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