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論戦・演説・講演原点山下よしき---「おばあちゃんの二つの教え」、「共産党に入ってよかった事」など、自らの生い立ちや政治家としての原点を熱く語った初期エッセイ集  
 

 実際に起きている健康被害から住民を守る立場で行動するのが行政

2008年6月2日 参議院・行政監視委員会

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 環境問題への対応として予防原則、すなわち完全な科学的確実性がなくても深刻な被害をもたらすおそれがある場合には対策を遅らせてはならないという考え方があります。これは国際的にも国内的にも受け入れられた考え方だと思いますが、環境大臣の認識を伺いたいと思います。

鴨下一郎環境大臣 今御指摘の予防的な取組の方法の考え方については、例えば環境と開発に関するリオ宣言において、重大な、あるいは取り返しの付かない破壊が発生するおそれのある場合には、科学的確実性が十分ではないという理由で環境劣化を予防するために費用対効果の高い手法を適用することを延期すべきでないと、こういうように規定されるなど、国内外で幅広く認められた考えと認識しております。

山下よしき この予防原則は外国からの輸入品ではないと思います。日本の公害問題、環境問題の痛苦の経験から導き出された教訓でもあると思います。
 例えば、水俣病でありますけれども、行政は、昭和三十四年十一月ごろには、水俣病の原因物質である有機水銀化合物がチッソから排出されていたことを断定はできないにしても、その可能性が高いことを認識できる状況にあったにもかかわらず、被害の拡大を防止することができませんでした。後追いになってしまいました。また、アスベストもやはり同じように後追い的になったということがあります。
 こういう痛苦の国内における公害あるいは環境問題への対応の反省から、こういう予防原則というものが我が国でも確立されていっていると私は思いますが、環境大臣の認識を伺いたいと思います。

○○鴨下環境大臣 我が国におきましては、かつて、著しい大気汚染あるいは水質汚濁が生じて水俣病のように悲惨な健康被害が多発したと、こういうようなことはまさしく事実でありますが、このようなことは二度とあってはならないと、こういうようなことは言うまでもないわけでございます。
 今後、有害物質による健康被害を未然に防止していくためには、先ほど先生おっしゃったような予防的な取組の方法の考え方、これを踏まえましてリスクの低減を図っていく、これが重要であると考えております。
 環境省としましては、このような認識に立って大気、水等の環境基準等を設定しておりまして、その確保に努めるなど、環境の保全に引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと、かように考えております。

山下よしき そこで、具体的な問題について聞きたいと思います。
 大阪の寝屋川市の廃プラスチックリサイクル工場の周辺で住民の健康被害が広がっております。リサイクル・アンド・イコール社という民間のリサイクル工場ですが、近隣の自治体から受け入れた廃プラスチックを破砕し、そして高温で溶融し、成形して、フォークリフトのパレットですね、荷台などを製造しております。二〇〇五年の四月に部分操業を開始いたしまして、二〇〇六年四月から本格操業に入りました。その後、イコール社の周辺の住民から、のどがいがらいとか、目がかゆいとか、皮膚がかゆい、疲れやすいなどの訴えが続出するようになりました。
 私も現場で直接住民の訴えを聞きました。私が訪ねたのは去年の十一月でありまして、三十人ぐらいの住民が集まってくれました。
 ある女性は、二十五歳の娘が一年半前から頭がしびれる、吐き気がするなどの症状、今までこんなことはなかった、引っ越ししないといけないのか切実に悩んでいる。七十代の女性は、去年ぐらいから何を食べても味もにおいもなくなった、今このお茶の香りもいたしませんと、こうおっしゃいました。七十代の女性、私は番犬要らずと言われるくらい鼻が利いていた、なのにこのところ、ゴマ油のいいにおいがするねと友達に言われても、へっと、お花のいいにおいがするねと言われても、えっとなると。耳鼻科に行って蓄膿症ではないですかと聞いたけれども、それはないと、神経からきているのではと言われた。別の女性の方、幼稚園児の孫は夏休みになると症状が出る、夏休みは家にいるので、のど、鼻を痛めて、プールも全くできない、だから連休には父親が遠くの山へ連れていく。六十代の女性、散歩をよくするが、イコール社ができてから物すごいにおいがして、むかむか、吐き気、のど痛、目のかゆみ、鼻のかゆみなど症状が出るが、よそへ行くとけろっと治る、帰ってくるとまた戻るという証言であります。
 これは、そこを離れると楽になるというのは化学物質過敏症の典型的な特徴だと思いますが、私は、そういう方々の生の声を聞きながら、これは大変なことが起こっているなと感じました。原因物質は特定されておりませんが、実際に深刻な健康被害が発生しております。
 こういうケースこそ、先ほど大臣が述べた予防原則の立場に立った対応が求められると思いますが、環境大臣、いかがでしょうか。

○○鴨下環境大臣 今御指摘の、大阪府寝屋川市にある民間の廃プラスチックリサイクル施設周辺において住民の皆さんから化学物質等に対する懸念の声が上がってきていると、こういうようなことでございますので、大阪府と寝屋川市が共同して、これは平成十九年の三月、そして同年の五月からは毎月、施設周辺の大気中の化学物質等の濃度調査を実施しているわけであります。また、その民間の事業者そのものにおきましても、敷地境界における化学物質等の濃度調査を自主的に実施してきており、調査結果についても自社のホームページ等で公開をしてきているというふうに聞いております。
 このように、地元自治体及び民間事業者においては既に一年以上にわたってモニタリングを行ってきているわけでありますが、今までの結果では、施設近辺においてはいずれも大気環境基準等を下回る結果を得ていると、こういうふうに聞いております。
 ただ、今先生おっしゃったように、予防原則という観点からは、いわゆるそれぞれのモニタリングをしている物質以外のものも場合によると関係するということもあるかも分かりませんので、環境省においても、引き続きこの地元の状況についてはしっかりと動向を注視してまいりたいというふうに思いますし、加えて、更なるいろんな問題があれば対処をするべきだと、こういうふうに考えております。

山下よしき 重要な答弁だったと思いますが、私は、大阪府と寝屋川市の対応は遅いし、不十分だということを感じております。
 先ほどの測定調査は、健康被害が発生してから二年近くたってようやく始まりまして、一年かけていろいろ測定をしているわけですが、しかし、その間にも健康被害は広がっております。私も操業中の工場のそばに行きましたけれども、辺りには鼻をつく甘酸っぱいにおいがかなり濃厚に漂っておりました。ところが、大臣おっしゃるように、現在までの測定では基準値又は指針値を下回っているというんですね。
 何でだろうと考えてみますと、容器や包装に使われるプラスチックというのは劣化しやすい物質の化合物でありまして、その上、千種類もの多様な化学物質が添加剤として混入されております。また、家庭から出される廃プラスチックには、容器に入っていた様々な内容物も付着していることもあると思います。それらが一緒になって圧縮されたり加熱、溶融されたりする過程で複雑な化学反応を起こして、既に知られている物質だけではなくて未知の化学物質が発生する可能性は小さくないと思うわけですね。
 ですから、従来型の対応では住民の健康被害が放置されてしまいかねない、そんなことがあってはならないということだと思います。
 そもそも、このリサイクル事業というのは寝屋川市や大阪府が勝手にやっているわけではありません。容器包装リサイクル法に基づく事業でありますし、国はこれまで循環型社会の形成に当たって、三R、すなわち、まず発生を抑制するリデュース、その上で再使用するリユース、最後に再生利用するリサイクルという基本原則を決めているはずなんですけれども、実際はリサイクル優先の方針を取ってきた。そういう中でこのリサイクル工場が造られ、稼働しているわけですから、私は、問題は国にも責任があるんじゃないかと思っております。
 大臣、先ほど、引き続き注視をしたいとおっしゃいましたけれども、是非、大阪府や寝屋川市とも協議して、従来型の対応ではない、予防原則に立った対応を行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。現に健康被害起こっておりますから。

○○鴨下環境大臣 予防原則というのは誠に重要な考え方であるというふうに思っております。
 特に、人の健康影響へのリスクが高い可能性がある化学物質、これにつきましてはこれまでも調査研究重ねておりますが、対策が必要という科学的な知見が得られた物質については、これは基準が設けられているわけでありますけれども、ただ、これにとどまらず、有害性に関する科学的な知見が十分でない物質であっても、健康リスクの低減を図るための指針となる数値として、例えばアクリロニトリルだとか塩ビモノマー等についても指針値を測定して、評価の指標として公表しているところであります。
 大阪府及び寝屋川市の調査におきましては、これは、環境基準が設定された項目はもとより、これら指針値が設定された項目についても毎月調査を行っている、こういうようなことであります。ただ、その結果によりますと、いずれも施設周辺では環境基準や指針値を下回っていると、こういうようなことであります。
 ただ、今申し上げているように、更に未知の物質も、我々は想定し得ないものもあるかも分かりません。ですから、病状等がいろいろと新たに起こってくるような問題があるようでしたら、しっかりと予防原則に沿って、これは特に自治体が主体でありますけれども、我々も注視しつつ連携をさせていただきたいと、こういうふうに思います。

山下よしき 今日は舛添大臣にもお越しいただいておりますけれども、国民の命や健康に責任を持つ厚生労働大臣としてお聞きいたします。
 目の前の健康被害を放置していいはずがないと私は思いますが、このようなケースの場合、予防原則に立った対応が求められると思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょう。

舛添要一厚生労働大臣 第一義的には大阪府、寝屋川市がきちんとこれは対応すべきでありまして、保健所、各地にありますけれども、地域住民の健康を守るために必要な調査研究を行うことができるということなんで、自治体の方でしっかり方針を出されて、今環境大臣がお答えしましたように、全部基準値以下ではあるんですね。
 しかし、まだにおいがするとかいろんな状況があれば更に踏み込んだ調査があってしかるべきだろうと思いますんで、これは、保健所としては自治体の市と連携を取りながら、そういうことをきちんとやって、今環境大臣がおっしゃったように、ひょっとしたら今までの基準値に挙げていない新たな物質が、化学物質が発生しているかもしれないんで、私は国民の生命をしっかり守るという立場で厚生労働行政をやっていますけれども、この東京から、寝屋川の状況はどうかというのはよく分かりません。基本的にはやはり地域にしっかりしてもらいたいんですね。
 その限りにおいて我々は、もちろん連携して協力をするということなので、どういう状況であるか、保健所を通じて情報を上げて、もう少し本格的に取り組むべきではないかというようなことであれば、私の方から、強制ということはできなくても、大阪府や寝屋川市に更なる調査ということを要請することはできると思います。少し情報を入れて、きちんと対応したいと思います。

山下よしき 住民の皆さんは、一刻も早く行政として健康被害の調査をしてほしいと強く要望をされております。当然だと思います。
 大阪府や寝屋川市が協議して健康被害調査を行うことが私は直ちに求められていると思いますが、もう一度、厚生労働大臣にお伺いしますけれども、大阪府や寝屋川市が健康被害調査に乗り出しても、これは別に基準値下回っているからといって法律違反には当たりませんね。

舛添厚労大臣 環境基本法その他の法律にはそれは抵触しないというふうに思いますけれども、現に健康被害を訴える方がおられれば、そういう方の立場に立って、何ができないかじゃなくて、何ができるかという形での行政をやっぱりやるべきだというふうに思います。

山下よしき 環境大臣にも確認しておきます。
 大阪府や寝屋川市が健康被害調査をすると、これは別に法律上問題ありませんね。

○○鴨下環境大臣 基本的には当該自治体がしっかりと取り組んでいただくと、こういうようなことでありますけれども、加えまして、先ほどから申し上げているように、予防原則にのっとって環境省としても注視をしてまいりたいというふうに思います。

山下よしき たとえ科学的知見が未確立であっても、実際に起きている健康被害から住民を守る立場で行動するのが行政であり、政治であると私は思います。
 寝屋川病と言えるほどの深刻な事態が起こっております。リサイクルの名による環境汚染の疑いもあります。これに拱手傍観するなら予防原則は看板倒れになる、しっかり構えて取り組んでいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

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