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【議事録】官邸の人事権強化批判 国家公務員法改定案審議入り 天下り禁止迫る---参院本会議

2014年04月02日

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 以下、日本共産党書記局長の山下芳生参院議員がおこなった本会議質問です。
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○山下よしき 私は、日本共産党を代表して、国家公務員法改正案について質問します。

 まず、国家公務員制度改革の基本問題について質問します。
 本法案は、2008年に制定された国家公務員制度改革基本法に基づくものとされています。我が党を除く与野党の修正合意で成立したこの基本法を始め、この間、国家公務員制度改革と称して進められてきたのは、第一に内閣一元管理という名の官邸の人事権の強化であり、第二に天下りの全面的な容認でありました。その一方で、公務員制度の根幹問題である労働基本権の回復は一切先送りされてきたのであります。こうした改革が何をもたらしたのか、今厳しく問われなければなりません。

 第一に、内閣一元管理という官邸の人事権強化の問題です。
 今回の法案に盛り込まれた幹部人事の一元管理は、議院内閣制の下、国家公務員がその役割を適切に果たすことを基本理念の第一に掲げる基本法に従ったものであり、内閣としての一体性を確保などを理由に、官邸の人事権の強化を目指すものであります。
 ところが、今まさに問題となっているのが、この間の一連の安倍内閣の人事にほかなりません。安倍総理肝煎りで任命されたNHK経営委員とそこで選ばれた会長が、公共放送のトップとしての資格に欠ける言動を繰り返し、国民の強い批判を招いているのはその一例であります。その役職に求められる能力や識見ではなく、政権との近さを基準とした人事が何をもたらすかは明らかであります。
 菅官房長官は、1年前の4月1日、内閣府の新入職員入府式で、国家全体の奉仕者として頑張ってほしいと言い、昨年九月の幹部職員セミナーでは、この政権の方向性を常に念頭に置いて取り組んでもらいたいと述べました。驚くべき発言です。安倍政権が求めているのは、国民に奉仕する公務員ではなく、政権に服従する公務員なのですか、お答えください。
 法案が導入する幹部人事の一元管理は、政府の幹部公務員候補を官房長官が審査し、その任免にも官邸が関わるものとなっています。こうした制度の下で、幹部になるために必要な能力は、その専門能力や国民目線ではなく、政権への近さ、果ては政権へのおもねりになっていくのではありませんか。これこそ猟官主義ではありませんか。
 言うまでもなく、日本国憲法は、戦前の天皇の官吏から全体の奉仕者へと公務員制度の理念を180度転換しました。公務員は、憲法の国民主権の下、全体の奉仕者として、法律に基づき、職務遂行の中立公平が求められることとなったのです。
 ところが、歴代自民党政権の下でこの理念はねじ曲げられ、大企業奉仕、日米同盟最優先の政治を担う官僚集団とされ、業界との癒着構造が形成されてきました。内閣一元制度の導入は、それを一層悪化させるものであります。求められているのは、現憲法の精神に沿った公務員制度の民主的改革であります。

 第二に、天下り禁止の問題です。
 公務員制度への国民の信頼を壊してきた最大の悪弊は、歴代自民党政権の下で繰り返されてきた官民の癒着、高級官僚の天下り、わたりであります。この悪弊を絶ち切るためには、天下り禁止を厳格に実施することです。
 ところが、第一次安倍内閣は、2007年、天下りのあっせんを禁止するだけで、それまであった天下りそのものの原則禁止規定を国家公務員法から削除してしまいました。
 その結果、何が起きたでしょうか。2011一年には、前資源エネルギー庁長官が東京電力に直接天下るという前代未聞の事態が起こりました。監督省庁から監督企業への最悪の天下りであります。3・11原発事故と国民からの強い批判の中で、前長官は東電顧問を辞職し、経産省は幹部公務員の電力業界への天下りを自粛せざるを得なくなりました。数々の官製談合を繰り返してきた防衛省においても、関連企業への天下り自粛を継続しています。
 官民の癒着を断ち切るためには、こうした自粛措置にとどまるのではなく、改めて天下りそのものを厳格に禁止することこそ必要なのではありませんか。
 加えて、国土交通省の前事務次官自ら、所管する業界への天下りあっせん、口利きを行っていたことが大問題となりました。ところが、このトップ官僚による重大な国公法違反に対し、安倍内閣は何の処分も行っていないのではありませんか。こうした姿勢が公務員制度に対する国民の信頼を失っているとは思いませんか。

 第三に、公務員の労働基本権回復の問題です。
 日本国憲法は、そもそも、公務員を含む全ての労働者に基本的人権として労働基本権を保障しています。ところが、憲法制定の直後、1948年に、公務員の争議行為の禁止を日本政府に押し付けたマッカーサー指令によってこの基本権が公務員から剥奪され、以来、その回復が我が国公務員制度の根本的な課題となってきたのであります。
 公務員は、国民の権利を尊重する立場で仕事をすることが求められます。そのためには、自らの人権が保障されていることが不可欠です。にもかかわらず、基本法には、「自律的労使関係制度を措置するものとする。」という不十分な規定が置かれただけでありました。労働基本権の回復こそ、公務員制度改革の根本に据えるべきではありませんか。
 公務員の労働基本権の保障は、世界的なスタンダードであります。ILOは、2002年、日本政府に対し、「公務員の労働基本権に対する現行の制約を維持するとの考えを再考すべきである。」と求め、以後、一貫して公務員への労働基本権の付与を勧告してきました。

 稲田大臣は、衆議院の法案審査において、これらILO勧告について、「公務員制度改革について、関係者と十分話し合うこと」と「改革の進展について情報提供を続けること」の二つを要請しているとの認識を述べられていますが、これは一貫して労働基本権の付与を求めてきたILO勧告の核心からあえて目をそらすものではありませんか。

 最後に、法案について具体的に二点質問します。
 まず、人事の中立性、公正性の問題です。
 法案は、幹部職員人事の一元化として、官房長官による適格性審査と幹部候補者名簿の作成を規定しています。政治家である官房長官による審査で中立公正な審査ができるのですか。
 法案は、幹部職員の降任の条件として、当該幹部職員が他の幹部職員に比して勤務実績が劣っていることを要件にしていますが、稲田大臣は、衆議院の審議において、「能力が劣っていなくても、ほかにいい人を登用したいがために、一つポストを下げる、そういう特例の降任制度」と答弁されました。一体、ポストを下げる客観的な基準はあるのですか。幹部職員の登用においても降任においても、政権の意のままということですか、お答えください。

 次に、人事院の代償機能の問題です。
 設置される内閣人事局には、総務省及び人事院から人事に関する事務が移管されますが、その中には級別定数の事務も含まれています。勤務条件そのものである級別定数を、第三者機関である人事院から移管し、使用者中の使用者である内閣人事局が決定するということになれば、人事院の代償機能を後退させることになるのではありませんか。
 以上、法案の徹底審議を求めて、質問を終わります。(拍手)


○稲田朋美公務員制度改革担当大臣 幹部人事の一元管理についてのお尋ねがありました。
 今回の公務員制度改革において導入を予定している適格性審査、任免協議等の幹部人事の一元管理プロセスは、能力・実績主義の下、いずれも各大臣の任命権を前提とする仕組みとしております。
 その上で、適格性審査においては、人事評価結果等の客観的な資料により、審査対象者が必要な標準職務遂行能力を有しているかどうかという客観的な基準により確認することといたしております。
 また、幹部職の個別の人事に係る任免協議においては、任命権者である各大臣が作成した人事案について内閣総理大臣及び内閣官房長官との協議が行われるものであり、複数の視点によるチェックが行われ、公正性が担保される仕組みとしているところです。したがって、幹部職員になるために必要な要素が政権への近さや政権へのおもねりになっていくとの御指摘は当たらないものと考えます。
 また、猟官主義とは、縁故や個人的なつながり等に基づいて任用を行う制度と承知しておりますが、幹部人事の一元管理は、能力・実績主義に基づいて適材適所の人事配置を行うものであり、猟官主義との御指摘は当たらないものと考えております。

 天下りについてのお尋ねがありました。
 国家公務員の再就職に関して、問題なのは、公務員OBの口利き、予算、権限を背景とした再就職の押し付け等の不適切な行為であります。平成19年の国家公務員法改正により、こうした行為を直接的に禁止するとともに、規制違反行為に関する監視体制として再就職等監視委員会を整備したところであります。今後とも、再就職等監視委員会による監視の下、再就職規制の厳格な運用を通じて、国民の疑念を招く天下りを根絶し、再就職に関する国民の疑念を払拭してまいります。

 公務員の労働基本権についてお尋ねがありました。
 憲法第28条に定める労働基本権は、勤労者に保障された権利ですが、公務員については、その地位の特殊性と職務の公共性から必要最小限度の制限が許容されていると解されております。
 また、自律的労使関係制度の措置は、国家公務員制度改革基本法第12条に基づき、公務員制度改革において政府に課せられた責務の一つではありますが、これまでの経緯を踏まえれば、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えております。
 なお、御指摘の争議権を含めた労働基本権の回復が公務員制度改革の根本的な問題との御指摘は当たらないと考えております。

 労働基本権に係るILO勧告についてお尋ねがありました。
 ILOからは、我が国の公務員の労働基本権の制限に関して勧告されていますが、勧告は、基本的に、公務員制度改革について関係者と十分話し合うこと、改革の進展について情報提供を続けることの二つを要請したものと認識をしております。
 自律的労使関係制度については、民主党政権下の平成23年六月に国会に提出された国家公務員制度改革関連四法案が廃案になったことなど、これまでの経緯を踏まえれば、引き続き慎重に検討する必要があると考えております。
 適格性審査及び幹部候補者名簿の作成について、中立公正の観点からお尋ねがありました。
 適格性審査においては、人事評価結果等の客観的な資料により、審査対象者が必要な標準職務遂行能力を有しているかどうかという客観的な基準により確認することとしております。
 また、幹部候補者名簿については、適格性審査の結果、標準職務遂行能力を確認された者を幹部候補者として記載する仕組みであります。
 このような適格性審査、幹部候補者名簿の作成は、客観的な判断材料、客観的な判断基準に基づいて行われる能力・実績主義の下での仕組みであるため、公正中立性は確保されており、御懸念は当たらないものと考えております。

 特例降任制度について、職員を降任させる場合の客観的な基準についてお尋ねがありました。
 現行国家公務員法においても、成績不良の場合であれば降任は可能でありますが、今回の法案においては、適材適所の幹部人事を実現するため、成績不良の場合でなくても、一定の要件の下に降任を可能とする新たな制度として特例降任制度を設けております。
 具体的には、特例降任においては、同じ組織で同じクラスの他の幹部職員と比較して勤務実績が相対的に劣っていること、その人に代えて、そのポストに任命すべき適当な者がほかにいる場合であること、他のポストに転任させることができない等、降任以外に方法がないこととの三つの要件を満たした場合に降任を可能とする仕組みとしております。
 また、より詳細な基準については、人事院規則において定めることといたしております。

 幹部職員の登用及び降任についてのお尋ねがありました。
 今般導入する適格性審査や任免協議等の幹部人事の一元管理プロセスは、各大臣の任命権を前提として、能力・実績主義に基づく客観的な人事評価の結果と、幹部職に係る標準職務遂行能力の有無や、それぞれの官職ごとに求められる専門的な知識や経験等の有無を考慮した適性に基づき判断を行うこととしております。
 また、同じく新たに導入する特例降任制度は、能力・実績主義の下、弾力的な人事配置の実現のために、成績不良の場合でなくとも一定の要件の下に降任を可能とする制度であり、その要件は本法案において客観的に定められているものであります。
 このように、幹部人事の一元管理プロセスや特例降任制度は、能力・実績主義に基づいて幹部職員の適材適所の人材配置を実現するためのものであり、総理大臣等の意向で誰でも登用したり降任させたりできるものではないため、御指摘は当たらないものと思います。

 級別定数に関する機能を内閣人事局が担うことについてお尋ねがありました。
 級別定数は、職責によるポストの格付を踏まえ、職員の勤務条件の確保の必要性を考慮して設定、改定されるものですが、今回の法案の検討過程で、この職員の勤務条件の確保の重要性について各方面から指摘をいただいたことを踏まえ、法案では、内閣総理大臣が人事院からの意見を十分尊重して、その設定、改定を行うこととしております。
 このような仕組みにより、今回の法案による改正後も、人事院が、労働基本権制約の代償機能を担う第三者機関として、職員の適正な勤務条件を確保するため、引き続き重要な役割を果たしていくことといたしております。
 以上でございます。

○菅義偉内閣官房長官 公務員のあるべき姿についてお尋ねがありました。
 現在、我が国が直面する様々な課題を解決していくためには、内閣の重要政策に対応した戦略的人材配置を実現をして、縦割り行政の弊害を排し、各府省一体となって行政運営を確保するとともに、政府としての総合的人材戦略を確立をし、職員一人一人が責任と誇りを持って職務を遂行できるようにするための公務員制度改革が急務であります。
 このような観点から、幹部職員人事の一元管理を行うことによって、政官の接点にある各府省の幹部職員について戦略的人材配置を実現するとともに、職員一人一人が、省益ではなくて国益を考え、自らやる気を持って国民のために職務を遂行することが可能になるものと考えております。

 天下り禁止の問題について発言がありました。
 御指摘の事案については、再就職等監視委員会による違反認定時には対象者が退職後であったために懲戒処分は行われておりませんが、同委員会において談話を発表し、各府省に対して再就職等規制の周知徹底を依頼したものと承知をいたしております。
 今後とも、同委員会による監視の下、こうした不適切な行為を厳格に規制していくことで天下りを根絶をし、再就職に関する国民の疑念を払拭をしてまいります。



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