あったか連帯ウェブ 日本共産党参議院議員山下よしき
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【議事録】大阪市長の思想調査は憲法違反 ---予算委

2012年03月13日

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○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 今日は、憲法と日本の民主主義の根幹にかかわる問題について質問します。
 初めに総理に伺います。憲法十九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とあります。この条項は戦前の深い反省の上に立って明記された大変重いものだと思いますが、総理の認識を伺いたいと思います。

○野田佳彦内閣総理大臣 山下委員御指摘の憲法十九条、思想及び良心の自由は、一般に内心について国や地方公共団体が制限し、又は禁止することは許されないという趣旨であると理解をしております。これを含め、憲法で保障された基本的人権は大変重要なものであると認識をしています。

○山下よしき 総理も重要だとお認めになりました。
 そこで、具体的な問題に入ります。先月、大阪市において全職員三万数千人を対象に労使関係に関する職員のアンケート調査なるものが実施されました。このアンケート調査に対して、日本弁護士連合会、大阪弁護士会などから、憲法十九条が保障する思想、良心の自由を侵害するものであるとの批判が広く起こっております。総理、御存じですか。

○野田首相 今資料でもお配りをいただいておりますが、大阪市において労使関係に関する職員のアンケート調査が行われて、今御指摘のあったような日弁連会長などの声明が出されているということは承知をしております。

○山下よしき 私、これは一地方の問題ではないと思うんですね。国会が見過ごすわけにいかない民主主義の根幹にかかわる重大な問題だと思っております。

 これが大阪市のアンケート調査そのものですけれども、ここには、あなたは組合活動に参加したことがありますかとか、あなたは特定の政治家を応援する活動に参加したことがありますかなど、個々人の思想や考え、心の中にまで踏み込む調査項目がたくさん含まれております。しかも、答えたくなければ答えなくてもいいという調査ではないんです。このパネル(右図)は、アンケート調査に付けられている橋下徹大阪市長名の文書です。直筆のサインがあります。「このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と、こうありますね。職員は、自分の氏名と職員番号と所属部署を記入した上でこれに回答しなければなりません。
 私たちは、大阪市の幹部職員と労働組合の一部には、率直に言って、正すべき問題点があると考えております。実際、我が党の大阪市会議員団は、例えば市長選挙での市役所ぐるみの選挙運動、あるいは特定団体と一体となった不公正、乱脈な同和行政、さらにはやみ年金の問題などを厳しく追及してまいりました。こうした問題は正されなければなりません。しかし、だからといって全ての職員の思想や考え、心の中まで市長が業務命令と処分で強制的に調査することなどあってはならないと考えるものであります。
 二月二十二日、大阪府労働委員会はこの問題で大阪市長に勧告書を出しました。厚生労働大臣、間違いありませんね。

○小宮山洋子厚生労働大臣 御指摘の件につきましては、今おっしゃったように、平成二十四年二月二十二日付けで大阪府労働委員会の会長から大阪市長などに対して、労働委員会規則第四十条の規定に基づき、審査の実効確保の措置として勧告されたと承知をしています。
 なお、この勧告書は不当労働行為の審査に先行して出された仮の救済です。現在、大阪府労働委員会で不当労働行為の審査手続が進められていると承知をしています。

○山下よしき 労働委員会とはどういう組織ですか。

○小宮山厚労大臣 労働委員会は、労働組合法に基づいて設置された独立の行政委員会です。労働組合法、労働関係調整法に基づいて、組合員であることを理由とした不利益な取扱いなどの不当労働行為の審査や労働紛争の調整などを行う組織でございます。

○山下よしき つまり、使用者としてやってはならない行い、不当労働行為があったかどうかを審査するのが労働委員会であります。
 では、大阪府労働委員会の勧告書は大阪市のアンケート調査にどんな問題があると指摘していますか。

○小宮山厚労大臣 勧告書では、アンケート項目の中には組合加入の有無を問う項目など、過去の判例ないし命令例に照らして支配介入に該当するおそれがある項目が含まれていると言わざるを得ないということ、また本件アンケート調査は、被申立人の業務命令として回答が義務付けられ、また正確な回答がなされない場合には処分の対象となり得ることが明記されている、こういったことなどが指摘をされています。

○山下よしき   今紹介された勧告書の一部をパネルにいたしました。(右図)
 ここにある支配介入とは何か、憲法との関係も含めて説明してください。

○小宮山厚労大臣 支配介入とは、不当労働行為として禁止されている行為でございます。労働組合法第七条第三号では、使用者は、労働者が労働組合を運営することを支配し、又はこれに介入してはならないと規定をされています。
 なお、労働組合法第七条で規定されている不当労働行為制度は、憲法第二十八条による団結権等の保障を実効あるものにするための制度であると考えられます。

○山下よしき 要するに、このアンケート調査は、憲法二十八条が保障する労働者が労働組合をつくったり加入したりすることへの不当な干渉に当たるおそれがあるということであります。しかも、このアンケート調査が続けられ回答内容が誰かに見られてしまったり集計されたりしたら、もはや救済の意味がなくなる、取り返しの付かない事態になるおそれがあると大阪府労働委員会が判断したということであります。
 ところで、この勧告書は橋下徹大阪市長に対して出されたものですが、その理由についてどう述べていますか。

○小宮山厚労大臣 勧告書では、被申立人、これは大阪市、橋下徹大阪市長等ですが、被申立人は、本件アンケート調査を当面の間凍結したとするが、当委員会は、救済の基礎の確保並びに労使紛争の拡大防止という観点から、審査の実効確保の措置として、この事件で当委員会が本件申立ての当否につき判断を示すまでの間、アンケート調査の続行を差し控えるよう勧告するといったことなどが指摘をされています。
 いずれにせよ、この勧告書は、不当労働行為の審査に先行して出された仮の救済です。先ほど申し上げたように、現在、大阪府労働委員会で不当労働行為の審査手続が進められていると承知をしています。

○山下よしき パネルの下の部分に当たります。要するに、こういう調査を委託し業務命令を出したのは大阪市長なんだから、大阪市長の責任でアンケート調査を止めるよう勧告したということであります。責任は大阪市長にあるということなんですね。ここがポイントです。一般の民間の誰かが任意でやっているんじゃありません。市長が公権力を使って、処分で脅しながらこういう調査をしている。ここに重大性があると私は思います。
 さらに、このアンケート調査には大きな問題があります。日弁連などが指摘しているように、憲法十九条が保障する思想、良心の自由を侵害するものになっているという点であります。
 このパネル(右図)は、アンケート調査の中にある設問の一つです。「あなたは、この二年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したことがありますか。」と聞いています。特定の政治家を応援したことがあるかどうかや、街頭演説を聞いたことがあるかどうかまで何で答えなければならないのか。
 総務大臣、一般論として聞きますが、地方公務員法は、自治体職員が勤務時間外に一市民として街頭演説を聞くことまで禁止するのを目的としているんですか。

○川端達夫総務大臣 お答えいたします。
 地方公務員法三十六条は職員の政治的行為を制限しておりますけれども、この規定は職員の政治的中立性を確保することを目的としております。
 個別の具体的な行為が三十六条に禁止されている政治的行為に該当するか否かについては、具体的な行為態様、状況等、事実関係の中で判断されるものでありますけれども、一般的に申し上げれば、職員が勤務時間外に単に街頭演説を聞くことを禁止するものではないと認識しております。

○山下よしき 今あったとおり、公務員の政治活動の規制は限定的なんですよ。それ以外は自由にできるんです。街頭演説を聞くことは規制されておりません。自由です。野田総理の街頭演説を公務員は聞いちゃ駄目だなんということにはなっていないんですね。それから、街頭演説を聞いたこと、あるいは聞かなかったことを人に言わないのも自由なんですね。ところが、この調査は、それを業務命令で言わせる。正確に回答しなければ処分の対象としているわけであります。これだけでも大問題だと言わなければなりません。
 しかも、この問いは、幾つかの選択肢の中から回答させるやり方になっております。青い線を引いてあります。自分の意思で参加したのか、組合から誘われたので参加したのか、それとも組合以外の者から誘われたので参加したのか、あるいは参加していないのか、全職員がこの中から選んで回答しなければならないんです。これでは、見る人が見れば、回答した職員がどの政党や政治家を支持しているか、あるいは政治にどの程度関心あるかまで全部分かってしまいます。まさに思想調査そのものですね。こういう調査を公権力を使ってやることが許されるのか。
 総務大臣、たとえ地方自治体の首長であっても憲法や法令に抵触する職務命令を出すことはできないと考えますが、間違いありませんね。

○川端総務大臣 お答えいたします。
 地方公務員法三十二条は、職員の要するに職務遂行義務を課しておりますけれども、この職務命令は適法でなければならないのは当然でございまして、各地方団体において発出される職務命令については、関係法令に基づき適切に判断の上、対処されることが肝要であると思っております。

○山下よしき 首長が憲法や法令に抵触する職務命令を出せないということは確認いたしました。ですから、憲法が保障する思想、良心の自由を踏みにじる思想調査など、誰であってもやることは絶対に許されないんです。
 加えて、この思想、良心の自由には、言いたくないことは言わない自由、いわゆる沈黙の自由も含まれます。ところが、驚いたことに、大阪市の調査には沈黙の自由がないんですね。職員は職場のパソコンで回答を入力するんですが、答えたくないと思った項目を飛ばそうとすると次に進めない仕組みになっております。回答を強制される仕組みになっているんですね。そうやって、心の中が回答すればするほどあぶり出されるような仕組みになっております。まさに現代の踏み絵だと私は思いました。
 もう一つ、この調査には看過できない深刻な問題があります。それは、思想調査の対象が市の職員にとどまらず全ての市民と国民に向けられているということであります。もう一度パネルを見ていただきたいんですが、あなたは、この二年間、特定の政治家を応援する活動に参加したことがありますかと聞いて、職員本人が参加したかどうかとともに、誘った人は誰か、誘った人の氏名まで回答することを求めております。誘った人は大阪市職員に限定されておりません。一般の市民、国民までが対象とされております。
 それから、これは別の設問(右図)ですが、あなたは、この二年間、職場の関係者から、特定の政治家に投票するよう要請されたことはありますかと聞いて、これも職員本人が要請されたかどうかとともに、要請した人は誰か、その氏名まで回答することを求めております。職場の関係者とありますけれども、これ職員に限定されません。例えば市役所、あるいは病院、あるいは保育所など、市の施設に出入りしている人はみんな関係者、対象となり得るということであります。
 つまり、一般の市民が大阪市役所の職員に街頭演説に行きませんかとか、誰々に投票してくれませんかと声を掛けたら、声を掛けた市民の氏名を報告せよというものであります。一般の市民や国民が演説会に誰を誘おうが、誰に投票をお願いしようが、全くの自由であります。相手が公務員であってもこれは自由であります。ところが、それを三万数千人の大阪市職員を通じて報告させ、市民を監視する網の目を張り巡らせようとしていると、これは非常に重大だと言わなければなりません。私は、こんなことが通ったら、本来市民の福祉のための組織であるべき市役所が市民を監視するためのまるで秘密警察のような組織に変質させられてしまうと感じております。
 総理、こんなことは憲法十九条、思想、良心の自由に照らして、日本国内のどこであっても絶対に許されないと思いますが、総理の認識を伺いたいと思います。

○野田首相 本件は個別の地方公共団体内部の事案でありますので、当該地方公共団体において、憲法、法律、条例等に基づき適切に判断し対応されるべきものと考えております。

○山下よしき 個別の問題として私は逃げちゃ駄目だと思うんですね。これは日本の民主主義の根幹にかかわる問題であります。総理として憲法十九条に照らして、この大阪市のようなやり方が許される、何も問題ないと考えるのか、もう一度はっきりお答えください。(発言する者あり)

○石井一委員長 静粛に願います。

○野田首相 繰り返しの答弁になりますが、当該地方公共団体において、憲法、法律、条例等に基づき適切に判断し対応されるべきものと思います。

○山下よしき 許される、問題ないということですか。

○野田首相 同じ答弁になります。当該地方公共団体で判断されるべきものと思います。

○山下よしき こんな問題に全く物が言えないというのは極めて情けないんですが、しかし、何度聞いても総理も、大阪市の調査が憲法十九条に照らして許されるとか問題ないということは言えませんでした、当たり前だと思います。
 今の憲法の下で、民主主義の日本で、こういう思想調査を行い、空恐ろしい監視社会をつくることは絶対に許されません。私はこの場で、大阪市が思想調査で集めたデータを即時廃棄すること、職員と社会に対して謝罪することを強く求めたいと思います。
 日本共産党は今年創立九十周年を迎えます。戦前の暗黒時代から今日までどんな弾圧を受けようとも自由と民主主義の旗を下ろさなかった党として、民主主義を守る一点で国民の皆さんと力を合わせて奮闘することを申し上げ、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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