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特区による保育基準の引き下げやめよ--参院行政監視委質疑【会議録】

2010年11月11日

山下よしき 日本共産党の山下芳生です。
 児童福祉法四十五条には、厚生労働大臣は児童福祉施設の設備及び運営について最低基準を定めなければならないとありますけれども、この最低基準の意義について厚生労働大臣の認識を伺いたいと思います。

細川律夫厚生労働大臣 この四十五条の最低基準、これは厚生労働大臣が定めなければならないとなっておりますけれども、これにつきましては児童福祉施設最低基準というのがございまして、その二条にこのように書かれております。児童福祉施設最低基準は、児童福祉施設に入所されている方が、明るくて衛生的な環境において、素養があり、かつ適切な訓練を受けた職員の指導により、心身共に健やかにして社会に適応されるように育成されることを保障することを目的としていると、こういうことでありまして、この最低基準というのはそのような意義があるものと思います。

山下よしき 今御答弁あったように、明るくて衛生的な環境とか、素養があり、かつ適切な訓練を受けた職員、こういうことが最低基準には明記されているわけですね。私は、子供たちが心身共に健やかに発達できる環境を国が責任を持って保障するんだという決意がここには込められていると、そう思っております。
 ところが、政府が現在提案している地域主権改革一括法案では、この最低基準をなくしてしまって都道府県の条例に委任するとなっているわけです。これは子供の発達に対する国の責任放棄になるんじゃないですか。

細川厚労大臣 この地域主権改革推進整備法案におきましては、児童福祉施設の最低基準、これを都道府県の条例で定めると、こういうことにするわけでありますけれども、その最低基準というのは、まず一つ、配置する従業員及びその数、二つ、その居室の床面積、三つ目は、児童の適切な処遇及び安全の確保、秘密の保持、健全な発達等に密接に関連するものとして厚生労働省令で定める事項といった児童に対するサービスの質に大きな影響を与える基準につきましては、従うべき基準、従うべき基準として厚生労働省令に定める全国一律の基準に従って都道府県等は条例を定めると、こういうことにしております。
 さらに、児童福祉施設の最低基準に関しましては、子供の健やかな育ちに深刻な影響が生じてはならないというふうに考えておりまして、この労働省令で定める基準につきましては現行の基準を基本に考えていきたいというふうに思っております。
 したがって、御指摘のように国の責任の放棄ということは当たらないのではないかと思います。

山下よしき では、具体的に保育所の最低基準について聞きたいと思います。
 資料に、保育所の最低基準のうち、職員配置と居室面積にかかわる部分を抜粋いたしました。
 そこで、二点質問があります。この保育所の職員配置と居室面積にかかわる部分は、今大臣が述べられた厚生労働省令で定める全国一律の基準に従って都道府県が条例を制定することになるのか。それからもう一つは、その場合、現行の最低基準、ここにあります職員配置基準ですと例えばゼロ歳児は児童三人に対して保育士一人など、それから設備の面積基準は二歳未満の乳児室は児童一人当たり一・六五平米、ほふく室は児童一人当たり三・三平米など、こういう現行の最低基準と同じ基準にするんでしょうか。

細川厚労大臣 まず、引き続き全国の一律の基準に都道府県が従うことになるのかと、こういうことでありますけれども、これについては、保育の質に直接大きな影響がございますから、従うべき基準として引き続き厚生労働省令で定める全国一律の基準に従って条例を定めると、こういうことでございます。
 それからもう一つお尋ねの、じゃ、その厚生労働省令で定める基準というのは現行の基準と比較してどうなのかと、こういうことでありますけれども、これにつきましては、保育士の配置基準、それから保育室等の面積の基準等を含めて、この児童福祉施設の最低基準に関しましては子供の健やかな育ちに悪影響が生じてはならないというふうに私ども厚生労働省は考えておりまして、厚生労働省令で定める基準については現行の基準を基本に考えております。

山下よしき 基本に考えるということですから、同一だということでいいですね、うなずいておられますので。
 そこで、確認したいんですけれども、なぜこの職員配置と居室面積の基準について省令で定める全国一律の基準に従うべき基準と、都道府県が決める場合もですね、ということにしたのか。その理由をもう少し語っていただけますでしょうか。

細川厚労大臣 この保育士の、この職員の配置基準とか、あるいは面積の基準と、こういうのは直接保育の質に影響があると、そういう基準でありますから、これは当然国の方でしっかりした基準を定めて、これを従うべき基準として全国一律に最低基準を維持すると、こういうことだと考えております。

山下よしき 非常に重要な御答弁だったと思います。最低基準そのものをなくしてしまおうとしている政府、厚生労働省でさえ、職員配置と居室面積については子供の発達を保障する上で全国どの地域でも現行の最低基準より下げてはならないとせざるを得ないということだと思います。これは当然だと思うんですね。
 資料に、下の方に三歳以上児一人当たりの面積基準の国際比較を示しております。御覧のとおり、日本の面積基準はストックホルムとかパリ市の三分の一ほどの低い水準にありまして、日本の保育所の最低基準は世界最低の最低基準だと言われております。
 その実態の一端を示しているのが資料二枚目の写真であります。読売新聞が報じましたけれども、神奈川県内のある認可保育園で園児たちがすき間なく並んで昼寝をしている写真であります。ちょうど同僚議員の田村智子議員のお子さんは、こういう状態で子供さんが頭をくっつけ合って寝ていることによって頭にシラミがうつって大変だったというふうにおっしゃっていましたけれども、こういう実態があるわけです。
 私も何人も、子供三人、保育所に預かっていただきましたけど、こういう状態のときにお迎えに行ったら大変ですよ。自分の子供の衣類を取りに行くのはもう足の踏み場がないですから、布団と布団の間をすき間を見付けて移動しなければならない。これは世界最低の基準に今なっているわけです。
 だからこそ、現行の児童福祉施設最低基準省令第三条には、「厚生労働大臣は、最低基準を常に向上させるように努めるものとする。」とあるわけですね。これは引き上げなければならない、後退させることなどあってはならないというのがこれまでのお立場だったんだと思います。これ、今もそうだと思うんですけどね。
 ところが、全国知事会の地方分権推進特別委員会、委員長は山田啓二京都府知事ですけれども、この委員会が今月の二日、福祉施設などの最低基準の見直しのため、三十人以上の知事が国に構造改革特区を連名で提案することを決めたと報じられております。全国知事会が提案する内容には、今議論させていただいている保育所の居室面積、保育士の配置基準も含まれております。
 私は、ここには重大な問題があると考えます。といいますのは、現在でも国の最低基準を上回る基準を設けることは地方の裁量でできることです。より良いサービスを提供する裁量は地方に今だってあるんです。それを地方が独自に決められるようにするということは、これは現在の最低基準を地方自治体が引き下げられるようにするということにほかなりません。これは地方分権の名で、福祉の水準、子供たちの発達を保障する水準を引き下げることにほかならない。
 私は、いかに地方分権を掲げようとも、こんなことは許されてはならない、そう思いますが、大臣、いかがですか。

細川厚労大臣 今委員が指摘されました全国知事会の構造改革特区の提案につきましては、そういう会議が開かれたというようなことは聞いておりますけれども、内容については私は承知していなくて、まだ私どもの方にそういうような提案があったわけではございません。
 ただ、委員が言われるような、その基準を低くするような、そういうようないろんなことが言われているとするならば、私どもが考えているのは、やはりどういう提案かをしっかり見て検討もしたいと思っておりますけれども、保育所での子供の健やかな育ちを保障するというためには、やはり施設や運営に関する基準というのをしっかり国の方でも定めて、それは適切に対応をしていかなければというふうに、私はそういうふうに思っております。

山下よしき まだ出ておりません。しかし、出すというのはもうはっきりしているんですね。山田委員長は十七日までに共同提案を行うというふうにおっしゃっていますから、その中にはっきりこの二つ入っていますからね。
 これもしかも厚生労働省がターゲットになっていますよ。福祉にかかわる提案が物すごい多いんですね。細かい提案が多過ぎるからだって山田さんは記者会見で言っていますから、これは必ず出てきますから。今大臣がおっしゃったように、これはやはり子供の健やかな育ちにかかわる問題、大きな影響があるので、国がちゃんと基準を作り、従ってもらわなければならないという態度で臨んでいただきたい。
 これ、特区の提案が出ますと、内閣府官房の事務室と、それから各担当の省庁が折衝して決定されることになります。厚生労働大臣の意思が決定的に重要ですから、これあいまいな態度じゃ困りますから、きっぱりこれについては、そんなことは駄目よと言っていただきたいんですが、もう一度確認します。

細川厚労大臣 私の方はまだ提案を受けてもいないし内容も見ていないもので何とも言えませんけれども、先ほども申し上げましたように、子供の健やかな育ち、それをきちっと国が基準を決めて、それを地方にもその基準どおりやっていただくということは、それはもう私の方では考えております。

山下よしき 大事な御答弁だったと思います。
 そこで、知事会の中には、保育所の面積基準には根拠がないという意見もあるんですよ。これは私そんなことないと思うんですけれども、厚労大臣の御認識、いかがでしょうか。

細川厚労大臣 根拠がないというふうに言われますとあれなんですけれども、これは、保育所の面積の基準なんかは昭和二十三年に基準が制定されまして、それ以来、改正も何もされていないということでありますけれども、当時は占領下にもありましたけれども、外国の基準を参考にして制定されたというふうに考えております。
 しかし、委員も御指摘のように、先ほどもありましたけれども、外国と比べてその基準が低いと、こういう御意見もありますし、意見というよりもそういう研究結果などもありますし、今の基準が合理的であるかどうかということについては、私は再検討もしなければいけないというふうに考えております。
 いずれにしても、私自身は全国一律の遵守すべき基準は必要だというふうに考えております。

山下よしき 再検討というのは、引き上げる方向だと思いますね。
 それで、もう一つ、知事会の中には、事故が起きた場合、責任は自治体が持つという意見もあるんですよ。私はこの意見は認めることはできないと思います。
 保育所の死亡事故が残念ながら後を絶ちません。厚生労働省も、これは昨年十二月に保育施設における死亡事例について調査をされて、過去六年間、平成十六年四月から二十一年十一月の死亡事例として、認可保育所で十九件、認可外保育所で三十件起こっていることを明らかにしました。その八割はゼロ歳、一歳、二歳児でありまして、具体的な事例として、認可保育所では、廊下に置いてあった本棚の中で熱中症で死亡とか、園庭で育てていたプチトマトを食べ窒息死とか、午睡中の死亡などが挙げられております。認可外保育所施設でも同じようなもの、あるいは浴室で溺死などがあります。この対策として、やはりちゃんと、専門家の意見は、窒息事故防止などのための観察を十分できるようにすることが予防としては大事だと。つまり、十分経験をされた保育士さんがちゃんと人数しっかりと配置されていることが大事なんだということが言われております。
 私は、事故を繰り返さない対策をしっかり取ることこそ国と自治体が果たすべき責任であって、かけがえのない幼い命を失った後で責任なんて取りようがない、そう思いますけれども、大臣の御認識、いかがでしょうか。

細川厚労大臣 それは、この最低基準の在り方の問題だというふうに思います。やはり、安心して子供を産み育てられる社会の実現を目指して、質の確保された保育サービスを充実をしていくということは、私としては大変大事なことだというふうに認識をいたしております。
 現在、政府の方では、子ども・子育て新システムの検討会議におきまして幼保一体化を含めました子供、子育ての包括的、一元的な制度の構築に向けて検討を行っておりまして、その中で保育の質の向上ということも当然検討していきたいというふうに考えているところでございます。

山下よしき 時間が参りました。
 子供たちの発達を保障する水準を引き下げて幼い命を危険にさらすような動きにはきっぱりとノーの態度を貫いていただきたいと思います。
 私は、地域主権改革の名によって福祉の最低基準をなくそうとする政府の動きも、そして特区制度を利用して保育の切下げをねらう知事会の動きも、子供たちの健やかな成長、発達を願う国民に対する背信行為だと思う、断じて認められない、そのことを申し上げて、質問を終わります。

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