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《録》学業と両立できる就職活動のルールをつくれ

2009年07月16日

2009年6月24日 参院行政監視委員会

○山下よしき 日本共産党の山下芳生です。

 今日は、大学生の就職活動について塩谷文部科学大臣に質問をさせていただきます。

 昨年の七月に、国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会の各会長が連名で、日本経済団体連合会に要請書を出されました。

 そこにはこう書いてあります。「企業における採用選考活動の早期化は、正課教育及び正課外教育等、学生が能力・資質を高めるための貴重な「学び」の時間を奪うことに繋がり、大学教育及び大学院教育に悪影響を及ぼすほか、教育機能や学位の質の維持・向上を阻害する要因となっております。また、このことにより、十分な教育を受けることができないまま学生を社会に送り出すことは、教育機関として憂慮しなければならない問題であり、大学が果たすべき使命の遂行が困難になります。」と。大変憂慮すべき事態だと思います。

 企業における大学生の採用選考活動の早期化について、文部科学大臣の認識をまず伺いたいと思います。


○塩谷立文部科学大臣 就職活動の早期化につきましては、今委員がおっしゃったように、大学側としては大変憂慮してこういった文書を出したわけでございまして、私どもとしても、ある程度その早期化、長期化については当然ながら是正が必要だと考えておりまして、学生が一定期間出席ができないとかあるいは研究活動ができないというような実態があるわけでございますので、これは企業側にとっても、やはりしっかり勉学を修めて、そしてそれなりの成果を出した者が採用される方がいいということだと思いますので、私どもも同じような考え方でおります。


○山下よしき 去年の秋の世界経済危機以降、事態は一層深刻化していると私は思っております。

 ちょうどおととい、NHK朝七時のニュースがこの問題を特集しておりました。企業の合同説明会の広い会場に学生が大勢集まっておりまして、参加者の中心は三年生でした。合同説明会を企画したスタッフの方は、去年とは真剣さが違うと、こうコメントをしておりました。取材を受けた学生たちは、四年生の先輩から、おまえらはまじやばいぞと言われるとか、周りがみんな何社回ったとか就活しているから、とにかく自分もやらなきゃと思うとか、不景気なので就職できるか心配などと語っておりました。学生が企業で一週間ほど就業体験するインターンシップという取組も大はやりだそうでして、これも三年生だけではなくて二年生も参加しているということでした。昨年の秋以降、例の内定取消しが多数出る中で、学生は就職活動への不安と焦りをますます募らせていると思います。

 大臣に伺いますけれども、大学生の就職活動の早期化、長期化は昨今より深刻化しているという認識はおありでしょうか。


○塩谷文科大臣 私どもとしましても、就職活動の長期化、そして早期化については大変憂慮をしているところでございまして、今お話ございましたように、三年生からということではやはり勉学、研究活動の時間が当然損なわれるわけでございまして、同時に、やはり企業側としても、先ほど申し上げましたように、しっかり勉学を修め、あるいはしっかり資格を取り、あるいはそういった成果を出した人材を採ることが一番好ましいことだと思っておりますので、そこら辺の共通なところを是非見出して、これはどういうふうな形でやるかというのは、かつての就職協定とかがなかなかうまくいかなかった例もありますし、お互いの、これは学生にとってもそういった状況からある程度焦りもあって自分が早く動いてしまうということもあるので、そこは両者のよくよく話合いをしてと思っております。

 インターンシップについては、これはいろんな形があると思いますが、大学でのいわゆるキャリア教育としての一環としてやっている場合には大いに結構だと思っているんですね。お互いに企業からも、企業の方としてもそういった人材をいろんな指導することも必要だし、インターンシップ自体は、私はキャリア教育なんかでは非常に重要だと思っておりますので、それがどういう形でやられているかということによると思うんです。


○山下よしき おっしゃるとおりだと思いますね。大学側が学生のいろいろな職業観を充実させるために行うものと、そうじゃない、企業側の意向でやるもの、これは区別する必要が私もあると思いますが、さっきの早期化、長期化の深刻化という点では、国大協などでつくる就職問題懇談会の調査でも、開始時期が早まっていると回答した大学等が〇六年度以来三年連続して五割を超えていますから、これは深刻化していると思います。大臣もうなずいておられますので、それはお認めになられると思うんですが。

 その下で、大学生活で今何が起こっているか。先日、六月の十二日に、全日本学生自治会総連合の皆さんがこの問題で国会要請行動に取り組まれました。全国各地から八十人の学生が参加をされまして、就活の実態がリアルに報告されました。私は、彼らや彼女らの訴えを聞きながら、就職活動の早期化、長期化が学生たちに三つの問題を生じさせているなと感じました。

 第一は、学問、研究する時間が奪われているということであります。例えば、卒論を書く指導を受けるゼミでさえも就活のために出席できないとか、何を学んだんですかと説明会で聞かれても答えにくくて、何のために大学に行っているんだろうと思うとか、月曜日から金曜日まで全部説明会で就活、四年生になってまだ一回も大学の授業に出られていないという人も複数ありました。大学生は学問が主体なのに、就活によって学問をする時間が削られるのはおかしい、これが多くの大学生の思いだと思います。

 それから第二に、自分を見詰め、働くことの意味を考える余裕がなくなっているということであります。例えば、考古学の学芸員に本当はなりたかったけど、周りから仕事を選ぶなと言われて一般企業にエントリーしたとか、自分も周りも、取りあえずどこでも就職できたらという雰囲気がある、こんな声が聞こえました。本当は自分の将来を考える時間が欲しい、みんな何かしらの目的があって大学に来て、それを生かしつつ働きたいと思っているのに、これが彼ら彼女らの思いだと思います。

 大学の就職指導の担当を長らくやられていたある方はこう言っております。自分の就職観を持ち自分の独自性を知る、それは単なる就職対策ではない、社会に出てからどう働くかにつながり、働くモラルを支えることになると。こういう学生に就職活動の現場で大事なものを体得させ、人間的に成長させることが今残念ながらできなくなっている、この代償は大きいと、この方はおっしゃっておられます。

 それから、私が感じた三つ目は、就職活動の長期化、早期化というのは経済的にも大学生に大変大きな負担を与えているということであります。説明会の会場が遠い場合は交通費が千円、二千円と当たり前に飛んでいく、新幹線を使えば一万円以上掛かる。交通費を稼ぐためだけのアルバイトをひたすらやらないといけないとか、アルバイトをしようにも、月曜日から金曜日、下手すれば一週間就活で、アルバイトをする時間もなく、しても全部交通費に消える。奨学金は就職したら返済するお金なのに、交通費に消えていくのがつらいという声もありました。

 今申し上げた三つは、これは個々の学生の問題にもはやとどまらず、大学が果たすべき社会的な機能が喪失しかけていると、ゆゆしき問題だと私は感じました。

 大臣の御感想と御意見、まず伺いたいと思います。


○塩谷文科大臣 ただいまのそれぞれ三点につきましては、まさに私もそのとおりだと考えております。

 特に、今お伺いして、二番目の点は非常に重要ではないかなと思っておりまして、それだけ学生が就職活動に熱心なのに、就職してすぐ辞めてしまうようなニート、フリーターが何で増えているのかということ。そうすると、やっぱり就職に対するいわゆる思いだけで、本当にどういう仕事に就いたらいいのかと自分を見詰めて、しっかりとそれに取り組むことないまま就職してしまうのかなと。したがって、結果的には、早期にいろんなこと、企業としても人を採っても、結局いい結果が出ていないのかなというそういう感じがしますので、やはりここは、企業としてもしっかりそういう点を見て、大体最近だと三年ぐらいまでに辞めてしまう率が相当高いということも聞いておりますので、先ほどの学芸員になりたいという話がありましたし、そういったところにやっぱり個人的なそういう思いをしっかり遂げられるような環境づくり、また本人もやっぱりそういうことをしっかり自己の意志を持って進むような環境をつくることが大事ではないかなと。それが結果的にお互いにいい仕事を見付け、あるいはいい人を採ってしっかりと長い間頑張ってもらえるような状況をつくるんではないかなという気がしておりますので。

 ただ、現状はなかなかお互いに、多分学生の方も早くという、この厳しいときは、企業も早くいい人材をというのが、両方の思いは一致してそうなっているんじゃないかなと、現状はですね。したがって、今後私どもとしても両者に働きかけをして、やっぱり共通点を見付けながら適正なルールをつくっていただきたいなと思っておりまして、何回かそういった直接の話合いもさせていただいておりますので、また努力をしたいと思っております。

○山下よしき 私、是非学生の生の声を大臣聞いていただきたいと思うんですけど、機会あれば、いかがですか。

○塩谷文科大臣 是非また機会あればそういう生の声も聞かせていただきたいと思いますし、私のやはり文部科学省の範囲の中でたまにそういうことは聞いておりますので、また機会があればよろしくお願いしたいと思います。

○山下よしき 現状は、学生たちにこうした時間的、精神的あるいは経済的な負担を三年生の早い時間から長期に強いながら、しかしながら就職できる保証は何もないわけです、学生は。落ちたら自己責任で、自分が悪いと、自分は社会から必要とされてないんじゃないかと落ち込んでしまうんですね。こんな不合理、理不尽は一刻も早く改めなければならないと思います。

 大臣も何とかしたいとおっしゃっておられますけれども、私は今、政治の責任で、学業と両立できて差別を許さない就職活動のルールを作る必要があると思いますけれども、大臣の御認識、伺いたいと思います。


○塩谷文科大臣 私どもも、できればルールを作って、それに基づいてお互いのいわゆる考え方等が両立していけることが望ましいと思っております。

 したがって、先ほど申し上げましたが、かつては就職協定というのがあって、今は倫理憲章という下にお互いにやっていると思っておりますが、なかなかそれが現実的には守られてきてないわけでございまして、少なくとももう少し実態を把握しながら、先ほどお話あった三つの問題点等が私は結果的にお互いに良くなくなっているんではないかなという気がしますので、そういうことも踏まえて、よりしっかりと話合いの下で、少なくとも平日は就活のいわゆる会合をしてはいけないとか、企業の方も、土日は休みですから、要は授業がある日はやっちゃいけないとか、そのぐらいのルールは最低限作ってもらいたいなと思っております。


○山下よしき なかなか具体的な御検討内容も披瀝していただきましたけれども、かつて経営者団体と大学が取り決める就職協定というものがございました。これは大学四年生の七月一日に会社訪問が解禁され、十月一日に採用内定は開始されるというものでありましたけれども、しかし、これは協定破りをする企業が多いからということで廃止されました。一九九七年に廃止になりました。違反者が多いからルールをなくすというのは私は逆さまだと思いますね。以来、就職活動というのはノンルールになって激化の一途をたどって、今や青田買いどころか種もみ買いというような状況まで生まれております。

 先ほどの倫理憲章は企業側の申合せにすぎませんので、先ほどおっしゃったように効果は出ておりません。やっぱり実効性のある新たなルールが私はどうしても必要だと思いますし、先ほど大臣は、平日は就職活動はしないようにと、採用活動はしないようにと、これも一つの内容だと思いますが、加えて私は、就職活動が学業を妨げることのないように、会社訪問や採用試験の開始日などで実効性のある公的なルールを確立すること、それから違反した企業には企業名の公表などのペナルティーを科すということなどがやはりこの内容としては考えられると思いますが、これ、いかがでしょうか。


○塩谷文科大臣 適切なルールを作ることが必要だと思っておりまして、ただ、それをどこまでいわゆる公的なものとできるかというのは今後検討しなければならないと思っております。ペナルティーを科すとかそういうことも含めて私ども是非検討をさせていただきたいと思っておりますし、やはり企業側としてもいい人材が当然欲しいわけですから、そのために例えばまだ研究活動とか勉学も修めていないのにその人材を採るようなことはやっぱりちょっと趣旨に合わないんでしょうから、そこら辺をもう少し本当に具体的な形で話合いをして、お互いに合意できるようなところで協定あるいはルールを作っていくことは当然必要だと思っております。

 これについては、やはり就職活動の基本的なやり方といいますか、そういうことも含めて、今、ガイダンスとかいろんな形で人を集めてやったり、インターネットを使って様々な方法が考えられているようでございますが、やはりそれは、どちらかというともう少し、何と言いますか、学校と大学側と企業が協力して何かできるような形ができないかなというような気がしますが、これはもうちょっとそれぞれの意見を聞いてお互いの共通点をルール化するということで、更にまた努力もしていきたいと思っております。


○山下よしき それで、努力の方向なんですけれども、三月十二日に文科大臣の下に企業側と大学側の意見交換会がやられまして、そこでどういう発言がされたのかちょっとペーパーを文科省からいただいたんですけれども、企業側の発言として、企業の採用活動は自己責任原則に基づき自主的に行うべきものだという発言が、事ここに至っても出ているんですね。要するに、新しいルールなんて要らないと、こういう感じの発言ですけれども、現状に全く胸を企業側が痛めていないんじゃないかと。むしろ、何と言いますか、超買手市場で、これはチャンスとさえ思っているんじゃないかという節を私は感じるわけですね。これではいけない。やはり企業としても、自分の企業が選り好みできるというだけではなくて、やはりこの問題でも企業の社会的責任というものを問うていかなければならないと思うんですが、大臣、ここは大臣の役割だと思うんですが、いかがでしょうか。


○塩谷文科大臣 私どもとしましても、企業に対しては、やはり今お話がございましたように、社会的責任において人を採用するということに対してもう少し、それぞれの私企業の考え方ではなくて、やはり社会の一つの構成員としてのやり方というのはあるんだと思いますので、そこら辺はある程度規律ある、節度ある方法で考えていただきたいなと思っておりますが、現状では、まさに個々の企業がそれぞれ行っているということで、これは競争というか争奪戦ということになっておりますので、そこをどうとらえるかということで、そこら辺が根本的にどういうふうに考えるかということをしっかりともう一度検討していかなければならないところだと思っております。


○山下よしき 大学生活の大半が就職活動と。これでは学生本人にとって大きな負担になるだけではなくて、学生を受け入れる社会にとっても、大臣がおっしゃるように企業にとってもこれは大きな損失だと。やはり、学業と両立できる就職活動のルールをつくる、企業にも社会的責任の立場から守らせる、これが政治の責任だと思います。

 あと時間本当に少ないんですけれども、最後に一問だけ。

 奨学金の返済猶予の期間が五年間というふうになっておりますけれども、これは実態は、五年たてば返済できるような収入が得られる保証はないと思うんですけれども、これ、実態に合わせて、五年間で返済猶予の期間が終わるということをもう少し弾力的に検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。


○徳永保文科省大臣官房審議官 奨学金の猶予期間ということにつきましては、これは昭和十八年に現在の日本学生支援機構の前々身団体でございます大日本育英会以来やっているわけでございます。こういう中で、私どもといたしましても、五年間の猶予期間をもって奨学金の返還ができるように生活基盤を確立をしていただきたいと考えております。

 現状におきましても、それでもなお返還が困難な場合には、様々な返還者からの相談に基づきまして具体的な資力を勘案しつつ、規定で定められた返還割賦額より低額の分割返還といったようなことについても特例で認めているということでございます。

 私どもとしては、日本学生支援機構の方に今後とも積極的に御相談賜りたいと思っているところでございます。


○山下よしき 昭和十八年に五年と決めたときの背景は、病気なら五年で治るだろうとか、兵役も五年たったらもう終わっているからと、これ非常に戦前の理由なんですね。

 今、年収三百万円以下の割合が、大学卒業して二十五歳から四十四歳までに二四・五%ですよ。だから、五年たったからといって三百万円超える保証ないわけでね、そこはゆっくりよく見て現実的な対応をしていただきたいということを申し上げて、終わります。

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