日弁連が派遣法抜本改正で院内集会 韓国の非正規職保護法とは
2010年11月09日
日弁連がいいタイミングで院内集会を開催してくれました。「非正規労働者保護法を展望する〜労働者派遣法の今国会での抜本改正を〜」と銘打った集会です。
日弁連は、政府の派遣法改定案について、2月19日に意見書を発表されています。そこには、「派遣労働者の低賃金・不安定雇用を解消するにはなお不十分」として、
▼派遣対象業務は専門的なものに限定すべき
▼登録型派遣の原則禁止にあたって、例外とされている「専門26業務」について、その範囲を厳格に見直すべき
▼製造業派遣は全面禁止されるべき
▼均衡を考慮する配慮規定を置くだけでは不十分であり、均等待遇を義務付けるべき
▼違法派遣の場合における直接雇用のみなし規定について、雇用契約の期間は、期間の定めのないものとすべき
など11項目の問題点が指摘されています。
集会では、日弁連貧困対策本部の中村和雄委員が、「この基本的な立場は崩れていない」と強調。同本部の小川英郎事務局次長は、「派遣法抜本改正に向けた国会での充実した議論が早急に必要だ」と述べました。どちらもいまの国会情勢をふまえた非常に重要な発言です。
派遣や契約社員として何年も働きながら雇い止めされ、裁判でたたかっている3人の当事者から、
「違法行為を指摘したら雇い止め。これでは派遣労働者は声を上げることができない」
「有期契約の労働者を保護する法律は何もない。無期契約、均等原則がない限り安心して働けない」
「どうして期間の定めがある労働者だと、これほど乱暴に扱われなければならないのか」
などの発言がありました。2人の女性は時折声を詰まらせながら訴えてくれました。その悔しさを胸に刻みました。
国会がいまやるべきは、こうした派遣切り・非正規切りされた当事者の生の声を、直接、たくさん聞くことです。そのうえで、どんな法改正が求められているのか、真剣に議論することです。
その点で、お隣の韓国で、98年に労働者派遣法がつくられ、非正規職が急増(労働界の推計では賃金労働者全体の約55%が非正規職労働者。政府の推計では約35%)したことにともない、非正規運動が高まって、06年に非正規職保護法が制定されたこと、その内容は、
@期間制勤労の使用期間を2年以内に限定。2年を超えたとき無期契約とみなす
A派遣勤労は対象業務を限定。派遣期間は原則1年、延長しても2年をこえることはできない
A違法派遣の場合、派遣先事業主は派遣勤労者を直接雇わなければならない。直接雇用されるときの勤労条件は、派遣先の勤労者の中に同種、類似業務を行う勤労者がいる場合、その勤労者に適用される就業規則等で定める勤労条件によること
C期間制・短時間・派遣勤労に共通して、賃金その他の勤労条件などにおける合理的な理由のない差別を禁止
などであることを報告してくれた龍谷大学の脇田滋教授の講演は大変参考になりました。
この非正規労働者保護法のもとで、韓国最大の企業・現代自動車の違法派遣に対し、2年を経過した時点で直接雇用をみなすべきであるとした大法院(最高裁)の画期的判決(10年7月22日)も下されたそうです。日本のトヨタやパナソニックにも、こうした法による規制がかかるようにしなければなりません。それでこそフェアな国際競争といえるでしょう。
脇田教授の報告の中で、日本との大きな違いとして、労働組合が産業別に組織されていることが指摘されました。正規と下請けの労働者が同じ組合に入ってともにたたかっているのです。実際、15万人を擁する金属労組(産別)の副委員長は下請けの労働者で、同労組はいま、「社内下請正規職化大闘争」に取り組んでいるそうです。企業別組合となっている日本の労働運動が克服すべき大きな課題だと感じました。
日本の社会のかたちを変えるたたかいとして、人間らしい雇用を保障するルールづくりに立ち向かいたいと思います。