2010年03月29日
3月26日の中井洽拉致問題担当相とのバトルのなかで、私が「在日外国人に北朝鮮の国籍を持つ者がいるのか」と質問し、法務省の田内正宏入国管理局長が「朝鮮という記載はあるが、歴史的経過から朝鮮半島出身者を示すもので、北朝鮮籍を表すものではない」と答弁するくだりがありました。「歴史的経過」について解説しておきましょう。
1910年、日本は朝鮮(大韓帝国)を併合し、第2次大戦敗戦まで35年間に渡り植民地支配を続けました。この間、朝鮮人は日本国民すなわち「帝国臣民」としての扱いを受けました。日本の植民地支配にともなって、強制連行などで朝鮮から日本に来た朝鮮人は、1944年、200万人近くいたといわれています。
1945年、日本の敗戦と同時に朝鮮は植民地支配から解放されました。在日していた朝鮮人の多くは朝鮮半島に戻り、朝鮮戦争がはじまる1950年には在日朝鮮人の数は55万人まで減りました。その後、朝鮮戦争による戦禍から逃れるため日本に戻ってきた人もあり、在日朝鮮人の数は60万人近くになります。
これらの人々が、現在の「在日」という社会集団を形成していくのですが、戦後の混乱期のなかで、外国人登録が課せられ、選挙権がなくなるなど、徐々に「日本国民」としての権利を失っていきました。
1952年、サンフランシスコ条約発効とともに、朝鮮人および台湾人は「在日」の人も含めすべて日本国籍を喪失させられました。日本国内に生活している被植民地の人々から、何の選択権も与えず、一方的に国籍を剥奪するというのは、植民地支配をした宗主国として国際的に非難されるべき措置でした。
しかし、朝鮮戦争勃発ともに、国が分断され、「朝鮮」という国家は存在しなくなりました。ですから、在日朝鮮人の外国人登録の国籍欄において「朝鮮」と記載されているのは、「朝鮮半島出身者」を示すものであり、何ら国籍を表示するものではありません。「朝鮮」の記載は「北朝鮮国籍」を示すものではないのです。
なお、1965年の日韓条約によって大韓民国とは国交が樹立されたため、在日朝鮮人の外国人登録に「韓国」と記載されている場合は国籍を表示するものとされます。
そのうえで、朝鮮学校の歴史もみておきましょう。朝鮮学校は、戦後、在日朝鮮人の人々が子どもたちに朝鮮語を学ばせるために「国語講習所」を設け、朝鮮総連や民団の前身である「在日本朝鮮人連盟」が「学校群」に発展させるなかでできたものです。
朝鮮学校で学ぶ生徒は「朝鮮」籍(北朝鮮籍ではない)が46%、「韓国」籍が53%、そのほかに日本国籍の生徒もいます。国交のない「北朝鮮」の国籍をもつ生徒はひとりもいません。
拉致問題とことさら結びつけ、朝鮮学校がなにやら得体の知れない組織であるかのように述べる中井担当相の姿勢は、およそ「歴史をまっすぐ正しく見つめる勇気をもった政権」(昨年10月の日韓首脳会談での鳩山首相の発言)の閣僚とは言い難いものです。