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中江要介著『日中外交の証言』を読んで

2008年12月14日

photo 日中平和友好条約締結30周年である今年、「日中青少年交流年」として年間4千名規模の青少年交流が実施されています。その中国側閉幕式(12月20日)に超党派国会議員団の一員として私も参加することとなり、一冊の本を読みました。

 元中国大使の中江要介さんが今年出版された『日中外交の証言』(蒼天社出版)です。中江さんは外交官として、1972年の日中国交正常化と、その一方で行われた日華断交=日本と台湾(「中華民国」)の断交、1978年の日中平和友好条約締結までの7年余りをアジア局で参事官、局次長、局長として、その後、1984年から87年までの3年余りは中国大使として、日中外交の仕事に携わってこられました。

 10年ほど前、日本共産党大阪府委員会主催でアジア外交のシンポジウムをおこなった際、中江さんがパネリストを引き受けてくださり、私がコーディネーターを務めたことがあります。外交官のイメージと違った大変気さくなお人柄に一遍でファンになってしまいました。そんなこともあり、数ヶ月前、国会内の書店で見つけて購入したのがこの本です。

 なかなか頁を開けず“積ん読”状態だったのですが一気に読了できました。日中国交正常化、日華断交、日中平和友好条約のそれぞれの局面にどういうことがあったのかを知ることができるのはもちろん、日中の範疇に収まらない外交のおもしろさ、大切さを感じさせてくれます。

 たとえば、外交には、これまでの歴史の積み重ねと現在の諸問題をすべて把握したうえで、厳密、正確な言葉を選び抜いて展開する面(「平和条約」か「友好条約」か、「国交樹立」か「国交回復」かなど)があるとともに、お互いのメンツを立てるために、あえて「同床異夢」、すなわち同じ条文で違ったことがいえる形で解決することもあるというあたりは、なかなか味わい深いものがありました。

 しかし、だからといって、無原則に双方の主張を足して二で割るような交渉ではなく、世界に通用する哲学、理念がなければならないことも教えられます。

 1978年、日中平和友好条約を締結した福田赳夫首相は、その前年の1977年に東南アジアを歴訪します。マニラで最後の締めくくりの演説をしたなかに示されているのが「福田ドクトリン」といわれているものです。そこには日本の東南アジア外交のポイントが3点述べられています。

 @ いかに日本が経済大国になっても軍事大国にはならない。
 A いままでの日本の東南アジアとの関係は物と金に重点を置きすぎて、心の問題を忘れていた。これからの東南アジア外交は心と心の結びつきが大事だ。これを重点にしたい。
 B 体制、主義主張にかかわらず平和共存の東南アジアを作る。具体的には共産主義、社会主義であったインドシナ3国と、自由主義、資本主義の現在ASEANといわれている東南アジア諸国連合との関係は競争ではなく共存を図っていく。そのために日本は応分のODA(政府による途上国援助)をはじめとする経済支援を行う。
(以上は中江さんのまとめ)

 イデオロギーの違い、体制の違いを超えて平和共存する――この考え方からすれば、日中平和友好条約の締結によって日中関係をしっかりしたものにすることは当然の成り行きだったと中江さんは振り返ります。いまでも通用する、いやむしろいまの政府が忘れてしまっている重要な考え方だと思います。こうした世界・アジアに通用する哲学、理念なしに、実りある発展的な外交交渉はできないし成果も得られないということでしょう。大いに共感でき勉強になりました。

 さらに、中江さんは随所で“外交というのは、最後は人間の問題”とおっしゃっています。交渉する人間同士の信頼関係がなければ、どんなことを話し合ってもだめで、相手の立場をわかろうとする姿勢がなにより大事だというのです。これも真理だと思います。

 日中外交の最前線で活躍された元中国大使・中江洋介さんの証言から、「歴史を鑑として」日本と中国、アジア、世界の関係の現在と未来を考えるのはとても有意義なこと。中国行きを前に、いい本を読むことができました。







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