郵政民営化によって労働者が解雇され路頭に迷うようなことがあってはならない――郵便事業会社(日本郵便)が業務を委託していた郵便輸送会社を整理した結果、6月末で会社解散となった近畿高速郵便輸送、大阪エアメール。2社の労働者とともに日本郵政・日本郵便の本社ビルを訪ね、就労斡旋を要求しました。
6月5日の参院総務委員会で、日本郵政の西川善文社長は私に、「先生のご意見を充分踏まえまして努力してまいりたいと存じます」と答弁していました。ところが、すでに会社解散となったのに、2社で約100名いた労働者のうち再就職先が見つかったのは現在たったの1名。いったいどんな「努力」をしたのか?
きょう対応した日本郵便の伊東敏明常務執行役は、「国会での指摘を踏まえて最大限努力してきたつもり。2社の輸送業務を引き継ぐ会社と個々に話し、どれくらい新たに人が必要になるのか聞いて、2社に対しても伝えてきた。だが、こういう要求書が出たことを考えると充分でなかったと考えられる」と述べ、「要求書をよく読ませていただきたい。そのうえで回答します」と答えました。
「努力したつもりだが充分でなかった」――非常に重要な答えです。実際、2社の業務を引き継ぐ各会社から出された採用条件は、「採用は10月以降、10名程度。採用地名古屋。日給制、臨時雇用」「採用予定5名。日給制、臨時雇用」「新潟在住者3名募集」というもの。「新たに雇用しない」という引き継ぎ会社も半数あります。
大阪で家族とともに暮らす労働者に対し、名古屋や新潟での採用、しかも日給制・臨時雇用の募集しかないのでは、とても行きようがありません。
全港湾阪神・大阪エアメール分会の河野分会長は、「解雇されて1週間。お金の面が心配。子どもが『うちのお父さん失業中やねん』というのが非常につらい。迷惑なことはしてない。賃下げにも応じてきたのに切り捨てられるのはさびしい」
同近畿高速郵便輸送分会の赤松分会長も、「人生の計画がいきなりなくなった。『お父さんこれからどうなるの?』といままで平和な家庭がきしみ始めた。僕らはこれまで賃金カットにも応じてきたのにこういう形になって残念。企業としての社会的責任を果たしてほしい」
安全、信頼、確実な郵便物の輸送を、誇りを持って担ってきた労働者とその家族が、どんな事態に陥り、どんな気持ちでいるか、直接の原因をつくった日本郵政、日本郵便は胸を痛めなければなりません。
じつは、2社の業務を引き継ぐ各会社はすべて日本郵便が100%出資する子会社。来年には各社が統合されて日本郵便輸送株式会社(仮称)1社になる予定です。「最大限の努力」というなら、「何人必要か」聞くだけでなく、親会社として2社の労働者の受け入れを指示すべきです。日本郵便にはその権限もあるし、責任もあるのです。
「これで終わりにするつもりはありません」――日本郵政・伊東常務は最後にそういいました。今後の対応に注目したいと思います。