環境問題への対応として「予防原則」という考え方があります。完全な科学的確実性がなくても深刻な被害をもたらすおそれがある場合には対策を遅らせてはならない、というものです。
1992年の地球サミットで採択された「リオ宣言」が有名ですが、日本でも水俣病やアスベストの対策が後追い的になり被害の拡大を防止できなかった痛苦の教訓として、「予防的な取組方法の考え方に基づく対策を必要に応じて講じます」(第3次環境基本計画、2006年4月閣議決定)とされています。
きょうの参院行政監視委員会では、そのことを鴨下環境大臣に確認したうえで、大阪・寝屋川市の廃プラスチックリサイクル工場周辺で、住民に健康被害が生じている問題について質問しました。
リサイクル・アンド・イコール社という民間のリサイクル工場で、近隣の自治体から受け入れた廃プラスチックを破砕、溶融、成型してフォークリフト用のパレット(荷台)を製造しています。2005年4月の操業開始後、周辺住民から「喉がいがらい」「眼がかゆい」「皮膚がかゆい」「疲れやすい」などの訴えが続出するようになりました。
昨年11月、私も現地で直接住民の声を聞き、これは大変なことが起こっているなと感じました。地元自治会あげての運動で、大阪府・寝屋川市による大気環境測定調査が行われましたが、測定した物質はいずれも「環境基準値以下」という結果となり、現在のところ原因物質は特定されていません。しかし、現に深刻な健康被害が発生しているのです。
私は「こういうケースこそ予防原則の立場に立った対応が求められるのではないか」と質問。鴨下環境大臣は、「予防原則からは、モニタリングした物質以外にも関係する物質があるかもしれないと考えられる。注視していきたい」と答弁。舛添厚生労働大臣も「保健所が住民の健康調査をすることはできる」と答弁しました。
“寝屋川病”といえるほどの深刻な事態であり、リサイクルの名による環境汚染の疑いがあるのです。これに拱手傍観するようでは、予防原則は看板倒れとなります。国、大阪府、寝屋川市はしっかり構えて取り組んでもらいたい。