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規制緩和で事故増加を認めた政府報告書

2008年05月15日

photo 総務委員会で消防法改正案の質疑。危険物施設の集中している石油コンビナートの保安規制についてただしました。

 1996年の高圧ガス保安法の改正で、通産大臣が認定した事業所には、自主検査と検査周期延長(連続運転)が容認されました。それまで、年1回、設備を止めて都道府県知事の保安検査(公的検査)を受けなければならないことになっていたのに規制緩和されたのです。当時、私は参院商工委員会で質問にたち、保安規制の緩和で事故が増加する危険を指摘し反対しましたが、心配したとおり、高圧ガス災害事故は1997年の89件から2007年の283件と3倍に増えました。

 原因別に見ると「劣化・腐食等」による災害が増加しています。確かに、石油コンビナートなど危険物施設はその多くが高度成長期につくられ老朽化しています。しかし、考えなければならないのは、設備の老朽化=劣化・腐食の進行=事故増大としてしまっていいのか、ということです。

 その点で、注目すべき報告書が厚生労働省から出されていることを発見しました。2007年3月の「ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会報告書」です。同報告書は、石油精製業設備で2002年〜2006年に発生した爆発・火災事故のうち、設備の腐食・磨耗、亀裂等によって発生した12件について分析し、「これらの事故の発生原因を見ると、工学的に未知の現象であった又は予測不能であったものは2、3例にとどまり、大部分は過去の経験・知見の集積により経年損傷の防止及び管理を適切に行えば防ぐことが出来たと考えられるものである」と述べています。

 大部分は防ぐことができた事故だったということです。逆にいえば、過去の知見を集め、管理を適切に行えば、たとえ設備の老朽化が進んだとしても事故を未然に防ぐことはできるということです。

 また、同報告書は、「こうした事故は、高圧ガス保安法の適用を受ける設備には発生しているが、労働安全衛生法の適用を受けるボイラー等では発生していない」とも述べています。これも重要な指摘です。両者のどこが違うのか。じつは、高圧ガス保安法は事業者による自主検査を容認しましたが、労働安全衛生法は第三者機関による公的検査が現在も維持されています。自主検査と公的検査の違いが、老朽化による事故発生の有無に直結しているということです。

 さらに、同報告書には、石油精製業界の「社内検査の公正性・独立性の確保」について分析しています。そこでは、「高圧ガス保安法の認定を受けている1企業で起こった不正事案の経緯を見ると、経営に危機感を持った外資系トップが急激な補修コストの削減を企図する中、2精油所において、コスト削減と検査を含む業務の『効率化』が優先され、法令遵守が軽視されるようになり、平成14年までの数年間、高圧ガス保安法の保安検査(=自主検査)の検査項目の省略及び虚偽報告を行うに至ったことが記述されている」などの具体例が示されています。

 そのうえで、「上記のような状況を見ると、石油精製業界において、経営や競争が激しいときであっても、社内検査の検査手順・方法が確実に遵守され、また社内の検査部門が会社の経営から独立して公正な判断が行われるようにするための仕組みが構築され、かつ、それを維持し続けるだけの体制があるとは言い難いと言える」と結論付けています。自主検査(社内検査)では、保安検査の公正性・独立性の確保と維持は難しいという指摘です。

 きわめて客観的、科学的な分析と結論に感動すら覚えます。1990年代の規制緩和万能路線は、政府自身の報告書で完全に否定されました。

 ならば、災害防止のために、保安規制の緩和から強化への転換、少なくとも石油コンビナートなど危険物が集中する大規模施設では、自主検査ではなく公的検査を復活・強化すべきです。

 ところが、私の指摘に、新藤義孝経済産業副大臣は、「検査の方法が緩和されたのであって、基準が緩和されたのではない」と無反省な答弁。これでは、いくら消防の調査権限や体制を強化しても事故は増えます。防災と住民の安全の一翼を担う総務大臣として関係省庁に問題提起すべきだと迫ると、増田寛也総務大臣は、「省庁間で緊密に連携を取りたい」と答弁しました。


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