とっても面白い本でした。『シェイクスピアの人間学』(小田島雄志著、新日本出版社)。政見放送リハーサルのため大阪と東京を行き来する新幹線の中で読みました。
「世界中の人がみんな“シェイクスピア好き”になったら、この世界から戦争が消えるでしょう」――東京芸術劇場館長でもある小田島先生の言葉に「それって、どういうこと?」と惹かれて本書を手にしてみました。
「たしかに彼の作品には、悲劇喜劇を問わず、かならずと言っていいほど、裏切りや忘恩、中傷や欺瞞などにふれる台詞やエピソードが出てきます。きっと彼も、実人生において、傷ついたり恨んだりした経験が多かったのだろうなあ、と思われるほどです。だがそれでもなお、人間にはそれを上まわるぐらい愛すべき点、称賛したくなる点、自分も人間であることを誇らしく思われるような点があることを、シェイクスピアは見せてくれます。だからこそ、やはり傷ついたりつらい思いをしたりしているわれわれも、彼によって慰められたり励まされたりするのです」(はじめに)
この本を読んだ人は、きっと、シェイクスピアが好きになることでしょう。そして、人間をより深く好きになり、失敗と悩みを繰り返すありのままの自分を好きになることでしょう。
シェイクスピアの作品といえば『ヴェニスの商人』くらいしか読んだことのない文学音痴の私ですが、巻末のシェイクスピア略年譜・作品紹介(37本の芝居が各々5行で簡潔に紹介されている!)にも助けられ、楽しく一気に読んでしまいました。おすすめです。